日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラコウモリ」の意味・わかりやすい解説
アブラコウモリ
あぶらこうもり / 油蝙蝠
Japanese pipistrelle
[学] Pipistrellus abramus
哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。イエコウモリ、アカコムリ、アブラムシなどの別名があり、青森地方ではコウモリネズミとよばれる。朝鮮半島、中国、台湾および日本では本州から奄美(あまみ)大島、沖縄本島まで分布する。翼開長20センチメートルほどで、頭胴長は40~60ミリメートル、前腕長は30~35ミリメートルである。体の上面は灰茶色、体の下面は灰黄色、幼獣は黒色を帯びる。耳は長さ10ミリメートル内外で先が丸く、基部が幅広く、その前にへら形をした耳珠(じしゅ)がある。もっとも普通にみかける住家性のコウモリで、もっぱら人家の屋根裏、瓦(かわら)の間、戸袋、近代的な高層建築では排気孔などに数頭から20頭、ときに100頭ほどの群れで生息する。4月から11月まで、夕方明るいうちにねぐらを飛び出し、川原、草原、庭などの地上5~10メートルの高さを不規則に飛翔(ひしょう)しながら、ハエやカ、カメムシなど小形の昆虫を捕食する。1産1~4子で、日本の翼手類のうち、もっとも産子数が多い。12月から翌年の3月まで冬眠する。近似種に、森林にすむモリアブラコウモリP. endoiと、洞窟(どうくつ)や人家から数例記録があるオオアブラコウモリP. saviiがある。
[吉行瑞子]