アブラボウズ(英語表記)Erilepis zonifer

改訂新版 世界大百科事典 「アブラボウズ」の意味・わかりやすい解説

アブラボウズ
Erilepis zonifer

カサゴ目ギンダラ科の海産魚。頭部にとげ,隆起線,突起物がなく,また肉には油が多いところから生じた名前であろう。北海道ではアブラコまたはアブラボウと呼ばれる。本州中部以北の北太平洋域に生息し,東は北部カリフォルニアにまで分布する。幼魚表層漂流物に集まるが,成長するにつれ深所の岩礁地帯に移動する。体が左右に平たく,頭や体に櫛(くし)状のうろこ櫛鱗(しつりん))があることが特徴。近縁ギンダラとは両背びれが接近し,しりびれが第2背びれより小さいことで区別される。体色は老幼によって著しく異なり,幼魚では白の横縞があったり,形が一定でない白の斑紋があるが,成魚では体色はほぼ一様で暗褐色である。全長1.3mにもなる。おもに深海はえなわで漁獲される。肉はおいしく,しゅんは冬であるが,肉にはワックス分が10%前後も含まれているので,食べ過ぎると下痢腹痛を起こすことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラボウズ」の意味・わかりやすい解説

アブラボウズ
あぶらぼうず / 油坊主
skilfish
[学] Erilepis zonifer

硬骨魚綱スズキ目ギンダラ科に属する海水魚。熊野灘以北の太平洋、兵庫県香住(かすみ)地区、オホーツク海、天皇海山列、北太平洋から北部カリフォルニアにまで広く分布する。体は肥厚し、頭は丸くて棘(とげ)や隆起がないので坊主頭を連想させる。2基の背びれが近接し、臀(しり)びれは第2背びれより小さいことで、近縁種のギンダラと容易に区別される。体色は成魚では一様に暗灰色で、顕著な斑紋(はんもん)はないが、幼魚では体側に白色の横縞(よこじま)や不正形の小白色斑紋がある。幼魚は表層の浮遊物に集まるが、成魚は水深680メートルまでの岩礁域にすみ、深海延縄(はえなわ)やトロール網で漁獲される。全長180センチメートル以上、体重90キログラムにもなる。旬(しゅん)は冬季で、照焼き煮つけ、みそ漬けにすると美味。脂肪分が多いので食べすぎると下痢をすることがある。

[尼岡邦夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブラボウズ」の意味・わかりやすい解説

アブラボウズ
Erilepis zonifer

カサゴ目ギンダラ科の海水魚。全長約 1.8m。体はわずかに側扁し,口は小さい。成魚は黒褐色で斑紋はないが,幼魚では白色の横紋や小斑紋が見られる。深海性であるが,幼魚は表層の漂流物に集まる。皮下に脂肪が多く,食べると下痢をすることがある。本州北部から北洋を経てカリフォルニアまで分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のアブラボウズの言及

【魚貝毒】より

…マグロ,サメ,サワラなどの肝臓でも同様な中毒が起こることがある。
[アブラボウズ]
 ハタに近い深海魚で,肉は美味であるが,非常に脂肪含量が高く腹部肉では48%にも達する。食べると肛門から油が染み出るといわれ,下痢が起こるのは異常に多い脂肪(グリセリド)のためと考えられている。…

※「アブラボウズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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