日本大百科全書(ニッポニカ) 「アボカド」の意味・わかりやすい解説
アボカド
あぼかど
avocado
[学] Persea americana Mill.
クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の常緑高木。熱帯アメリカ原産で、果肉を食用にするため栽培される。染色体数は2n=24である。ワニナシalligator-pearの名もある。
3基本系があり、メキシコ系var. drymifoliaはメキシコ原産で、耐寒性が強く、零下8℃にも耐える。葉は楕円(だえん)形で10~15センチメートルでクスノキ香がある。グアテマラ系var. guatemalensisはグアテマラ原産、西インド系var. americanaは西インド諸島、コロンビア北部に多く、ともに耐寒性が弱く、葉は大形で香りがない。
花は円錐(えんすい)花序につき、雌雄異熟。雌蕊(しずい)先熟花は午前中に初の開花をして閉じ、雄しべの熟す翌日の午前中に二度目の開花をする。雄蕊先熟花はこれと逆の関係にあり、相互間の受精が多く、自家受精はまれである。結果率は1%内外である。
果実はグアテマラ系は14か月で熟し、他系は7か月。球形、楕円形、西洋ナシ形で、大きな種子をもち、15~300グラム。メキシコ系は小果。表皮は緑色、紫黒色、まれに黄色もあり、表面は平滑ないし粗い。果肉は緑色ないし黄色で、肉質は軟らかくバター状。脂肪、タンパク質、ミネラル、ビタミンに富み、特有の香味がある。味はメキシコ系が最高。剥皮(はくひ)し、刻んで野菜サラダに入れる。バターがわりにトルティーヤ(トウモロコシ粉を練って焼いたもの)やパンに塗って食べる。ペースト状にしたソースをワカモレとよび、メキシコ風料理の添え物としてよく使われる。また、種子を取り去り、二つ割りにした生果にメキシカンライムの果汁を絞り込んだものもよく、日本風ではしょうゆの味つけでもよく、利用面は広い。生果は20%の油分を含み、アボカドオイルの原料ともなる。
[飯塚宗夫 2018年8月21日]