日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリアヌス」の意味・わかりやすい解説
アリアヌス
ありあぬす
Flavius Arrianus
(95ころ―175ころ)
小アジア、ビティニア出身のローマの軍人、政治家、歴史家。哲学者エピクテトスの弟子。ローマ帝政下でカッパドキア総督を務めた。早くからギリシア語で著作を著した。主著は『アレクサンドロス大王の歴史』7巻で、大王の遠征路を正しく記述し、ゆがめられて作り話じみていた大王の像を訂正しようと努力した。その史料操作は厳密、的確で、大王を冷静かつ客観的に叙述しており、文体は簡潔にして平易である。現在アレクサンドロス大王について知りうることは、彼の著作によるところが大きい。そのほか『ビティニア史』8巻、『パルティア史』17巻、およびインドの地誌についての著作などを著した。
[田村 孝]