アルクマイオン(読み)あるくまいおん(英語表記)Alkmaiōn

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルクマイオン」の意味・わかりやすい解説

アルクマイオン(ギリシア神話)
あるくまいおん
Alkmaiōn

ギリシア神話の英雄。アルゴスの預言者アンフィアラオスとエリフィレの子。彼は父アンフィアラオスの命令でエピゴノイテーベ遠征に参加したが、のちにもまた父の命に従い、父を裏切った母エリフィレを殺した。その罪により、彼は復讐(ふくしゅう)の女神エリニエスらに追われて諸国をさまよった。プソフィスの王フェゲウスのもとで罪を清められ、その娘アルシノエを妻とするが、母親殺しの穢(けがれ)が飢饉(ききん)を招き、ふたたび放浪の旅に出る。アケロオス川に着いたとき、川神は彼を清めて娘カリロエを彼の妻とした。しかし、前にアルシノエに与えたハルモニアの首飾りと衣装を彼女が欲したため、アルクマイオンはプソフィスを訪れ、フェゲウスに偽りの理由を述べてそれらの品物を返すよう求めたが、うそを見破られてフェゲウスに殺された。

[小川正広]


アルクマイオン(哲学者、医者)
あるくまいおん
Alkmaiōn

生没年不詳。紀元前500年ごろのギリシア哲学者医者クロトン出身ピタゴラスの医学説をもっともよく継承し、ギリシアで最初医学書を著した人と考えられている。四体液説を唱え、四液の調和が保たれているとき人は健康であり、平衡が崩れるとき病気がおこるとした。解剖を試みたとされているが、動物を剖検するにとどまり、人体解剖は行わなかったと考えられる。

[大鳥蘭三郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルクマイオン」の意味・わかりやすい解説

アルクマイオン
Alkmaiōn

ギリシア神話の英雄。アンフィアラオスとエリフュレの子。エピゴノイ軍勢の総大将としてテーベを攻略したが,この遠征から帰国すると,父の遺言どおり母を自分の手にかけて殺した。それは,母エリフュレがポリュネイケスとテルサンドロスの父子からそれぞれ,ハルモニアの首飾りと衣とを贈られて買収され,まず夫アンフィアラオスを,次に彼自身をテーベ遠征に参加するよう強制し,これがアンフィアラオスの死の原因となったからである。アルクマイオンはこの母殺しの罪のため,復讐の女神エリニュスたちに追われて諸国をさまよい,最後にようやくアケロオス川の河神に罪を清めてもらい,その娘カリロエと結婚したが,彼女に頼まれ,前の妻アルシノエに与えたハルモニアの宝を取戻しに行って,アルシノエの父と兄弟たちに殺されたという。

アルクマイオン
Alkmaiōn

前5世紀頃のギリシアの思想家,医者。南イタリアのクロトン生れ。ピタゴラスの弟子。ピタゴラス派の思想を人体生理に適用し,健康と病気の説明を試みたことや,古来の心臓中枢説に対して知覚中枢を大脳においたこと,初めて眼の手術や解剖を行なったこと,思惟と感覚を区別したことなどで知られる。その著『自然について』の断片が残っている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android