日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルトゥング」の意味・わかりやすい解説
アルトゥング
あるとぅんぐ
Hans Hartung
(1904―1989)
ドイツのライプツィヒに生まれ、フランスに帰化した画家。1914年からドレスデンに住む。早くから絵を描き始め、表現主義に熱中した時期もあったが、1922年抽象的な水彩やデッサンのシリーズを描く。同年カンディンスキーを知り、抽象絵画について彼の感化を受けた。その後ミュンヘンおよびドレスデンの美術学校に学び、イタリア、フランス、スペインなどを旅行。1931年ドレスデンで初の個展を開いた。1935年ナチスを嫌ってフランスに移住し、パリで困難のうちに制作を続ける。第二次世界大戦ではアフリカの外人部隊に入り重傷を負い、右足を切断した。戦後フランス市民権を取得。東洋の書を思わせる彼のカリグラフィックな抽象は、戦後美術に大きな影響を与えた。南フランスのアンティーブで死去した。
[野村太郎]