化学辞典 第2版 の解説
イオン-マイクロプローブ分析
イオンマイクロプローブブンセキ
ion microprobe analyzer
金属,合金,半導体などの固体の特定の表面をイオン衝撃し,そこから放射される二次電子によって表面を観察し,同時にその部分からスパッターおよび蒸発により発生する二次イオンを質量分析して組成を分析する方法.H. Lieblにより1967年に開発された.装置の配置図を示す.一次イオン源としては,デュオプラズマトロン(duoplasmatron)を使用し,不純物イオンによる試料の汚染を避けるために質量分離したイオンを数 kV から数十 kV に加速し,1 μmφ程度に収束して試料を衝撃する.このイオンを1 × 1 mm 程度の範囲で走査して,45°の角度で放射する二次電子を二次電子増倍管に導き増幅したのち,イオン走査と同期させてブラウン管上に表面状態を反映させる.これは走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope)と同じ原理であるが,焦点深度は電子顕微鏡,光学顕微鏡よりはるかに深い.上記の表面状態の観察とともに,イオン衝撃で発生した二次イオンを,90°の角度で加速して二重収束質量分析計または質量分析器で分析し,観察した表面部分の組成を分析する.一次イオンには,通常,40 Ar+を使用する.また,試料によっては16 O-を使用するほうが有利な場合もある.よく似た手段にX線マイクロアナライザーがあるが,これは原子番号の小さい元素を感知せず,低濃度組成の感度が悪いので,イオン-マイクロプローブ分析のほうがこの点ですぐれている.また,同位体組成も正確に測定できる.本方法におけるイオン衝撃のかわりにレーザー光を使用することも行われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報