日本大百科全書(ニッポニカ) 「イッポンシメジ」の意味・わかりやすい解説
イッポンシメジ
いっぽんしめじ / 一本占地
[学] Rhodophyllus sinuatus (Fr.) Sing.
担子菌類、マツタケ目イッポンシメジ科の毒キノコ。傘は5~15センチメートル、表面は淡い黄色ないしは灰白色。ひだは幅広く、初めは白、のちに淡桃色となる。ひだの縁は波形。茎は白く、縦に裂ける。胞子は五角形か六角形で、胞子紋は淡桃色ないしは淡い肉色。秋、雑木林の地上に生え、国内での分布は広い。イッポンシメジはこの科の代表種だが、日本では近縁のクサウラベニタケのほうが普通で、これによる中毒が多い。両菌とも中毒症状としては、激しい下痢と嘔吐(おうと)を伴うが、致命的な毒性はない。両種間の区別はむずかしいが、実用的には区別する必要はない。むしろ問題になるのは、優れた食用菌であるウラベニホテイシメジR. crassipes (Imaz. et Toki) Imaz. et Hongoとの区別である。これらの毒菌、食菌は同じ雑木林に同時に発生するので注意を要する。ウラベニホテイシメジは茎が太く肉は締まり、全体に厚肉大形。傘の表面の色はイッポンシメジと似ているが、微細な絣(かすり)模様があり、見慣れた人では容易に区別できるが初歩の人にはむずかしい。したがって傘を裏返し、ひだが「すこしでも桃色を帯びているキノコは食べない」という注意が必要である。なお、ウラベニホテイシメジをイッポンシメジとよぶ地方が多いから、呼び名にとらわれない配慮も必要である。
[今関六也]