日本大百科全書(ニッポニカ) 「いばら姫」の意味・わかりやすい解説
いばら姫
いばらひめ
Dornröschen
『グリム童話集』(第50番)の話。待ち望んでいた娘が生まれたので、王は国の仙女12人も招いて祝宴を開く。仙女たち11人が娘に祝福を与えたとき、招待されなかった13番目の仙女が入ってきて、娘は15歳のとき死ぬと予言する。12番目の仙女が、死でなく100年間の眠りに落ちると訂正する。15歳の誕生日に娘は予言どおり紡錘(つむ)を指に刺して眠りに落ち、城中の人も眠り、周りには茨(いばら)が生い茂る。多くの王子が茨をかき分けて入ろうとするが失敗する。ちょうど100年たったとき、ある王子が入ることに成功し、眠っている娘の美しさのあまりキスをすると、娘は目覚め、城全体も目覚めて、2人は結婚する。100年の経過と王子のキスが時間的に一致するとか、ちょうど誕生日に娘1人留守番をして紡錘を刺し、しかも眠りに落ちるときには王や女王も帰ってきて同じく眠りに落ちるなど、昔話の様式上の特徴がはっきりみられる話である。100年の眠りから覚めた娘が115歳になっていないことも同じ様式上の性質である。
[小澤俊夫]
『マックス・リュティ著、小澤俊夫訳『ヨーロッパの昔話――形式と本質』(1969・岩崎美術社)』▽『金田鬼一訳『完訳グリム童話集2』(岩波文庫)』