日本大百科全書(ニッポニカ) 「イブン・ハウカル」の意味・わかりやすい解説
イブン・ハウカル
いぶんはうかる
Ibn Hawqal
生没年不詳。10世紀のアラビアの地理学者。バグダード生まれとの説がある。943年にバグダードを旅立ち、北アフリカからイスパニア(スペイン)に入り、またサハラ砂漠を越えてガーナ王国を訪ね(951)、その地方のイスラム事情を初めて伝えた。エジプトから西アジア、中央アジア、インドを巡り、シチリアにも行った。著書の『大地の姿』(別名、『諸道諸国志』)はアラビア地理学に長足の進歩を与えた名著で、体裁はバルヒーAbū Zayd al-Balkhī(850ころ―934)、イスタフリーal-Istakhrī(生没年不詳)などの書に負うところが多いが、さらに豊富で観察も綿密である。ことに、ファーティマ朝の味方としてシーア派イスラムの立場をとっていることは興味が深い。
[前嶋信次]