イリエワニ
estuarine crocodile
Crocodylus porosus
クロコダイル科のワニでもっとも危険な種類といわれる。インド洋のラカディーブ諸島から東南アジア一帯,フィリピン,オーストラリア北部,フィジー諸島に及ぶ広域に分布する。全長は平均3.5~4.5m,最大が7.5mくらい。吻(ふん)部は比較的細長く長さはその基部の幅の1.7~2.1倍ほどで,眼の前から吻端にかけて2条の隆起が走る。後頭鱗板を欠き頸鱗板は4枚。体背面や四肢には黒斑が点在する。潮線までの河口や入江の汽水域にすみ,海にも泳ぎ出る。後肢の水かきが発達して遊泳力に優れ,遠くの島にも泳ぎ渡る。餌は家畜を含む哺乳類,魚類。性質が荒く水浴や漁をする人たちが襲われることもある。夜間,大きな獲物を襲うときは後肢で立ち,背後から抱きつくようにして水中に引きずりこむといわれる。雌は川岸に泥の巣をつくり25~50個ほどを産卵し,子ワニは3~5ヵ月で孵化(ふか)する。
執筆者:松井 孝爾
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イリエワニ
いりえわに
estuarine crocodile
[学] Crocodylus porosus
爬虫(はちゅう)綱ワニ目クロコダイル科のワニ。危険な種類とされる。インド、東南アジア、フィリピン、オセアニア、フィジー諸島に広く分布し、オセアニア、フィリピン産を別亜種のインドシナイリエワニC. p. biporcatusに分けることもある。全長3~7メートル、吻部(ふんぶ)は細長く、多くは後頭鱗板(りんばん)を欠く。河口の汽水や海岸にすみ、スリランカとニューギニアでは淡水にもすむ。水かきは、前肢では指の基部、後肢では外側の足指の先端まで発達して遊泳力に優れ、海に泳ぎ出て遠隔の島に達することもある。性質が荒く、大形動物のほか家畜や人を襲うため恐れられている。とくに夜間に入り江で漁をする人たちが襲われ、水中に引き込まれるという。
[松井孝爾]
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イリエワニ
クロコダイル科でワニでもっとも危険な種類といわれる。全長は平均4m,最大6mくらい。インド東部〜フィリピン,ニューギニア,オーストラリア北部,フィジー諸島に分布。河口,入江にすみ,魚類,爬虫(はちゅう)類,哺乳(ほにゅう)類を捕食するが,性質荒く人間をも襲う。夜間,大きな獲物を襲うときは後肢で立ち,背後から抱きつくようにして水中にひきずりこむといわれる。吻(ふん)端は幅が狭く,目から吻端まではっきりした隆条がある。25〜50個を産卵し,雌が保護する。
→関連項目クロコダイル
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イリエワニ
Crocodylus porosus; estuarine crocodile
ワニ目クロコダイル科。全長 7m。体色は暗緑黄色で,暗色の斑紋がある。ワニのなかでは最も獰猛な種類の一つで,人食いワニとしても知られる。卵生で,雌は川岸の堤などに土まんじゅう形の巣をつくり,40~80個産卵する。アジア大陸南部,フィリピン,ニューギニア,オーストラリア北部などに分布し,淡水,汽水,海水のいずれにもすむ。
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世界大百科事典(旧版)内のイリエワニの言及
【クロコダイル】より
…クロコダイル属Crocodylusは10種を含むワニ類中最大のグループで,大型種はすべて本属に入る。すなわち,全長の最大が7mに達するものに,熱帯アジアからオーストラリア北部に分布する[イリエワニ]C.porosus(イラスト),熱帯アメリカに分布するアメリカワニC.acutus,オリノコワニC.intermediusおよびアフリカ・マダガスカル産の[ナイルワニ]C.niloticus(イラスト)があり,次いでヌマワニC.palustrisの5mで,他は3m前後である。これら大型種の中でもとくに人に危険な種はイリエワニとナイルワニくらいで,後者も地方によっては安全とされる。…
※「イリエワニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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