日本大百科全書(ニッポニカ) 「インディー」の意味・わかりやすい解説
インディー
いんでぃー
indie
インディーズとも呼ばれる。小規模な自主制作レコード・レーベル、あるいは独立系レコード会社(independent labels)の通称。国際的な複合企業である五つのレコード会社組織、ソニー(日本)、BMG(ドイツ)、ワーナー(アメリカ)、ユニバーサル(カナダ)、EMI(イギリス)を五大メジャーと呼び、それらの傘下にないレコード会社やレーベルをインディーと呼ぶ。転じてそのような小規模レコード・レーベルからリリースされるポップ・ミュージックを指す用語としても用いられる。五大メジャーとの対比で、マイナー(・レーベル)と呼ばれることも多い。レーベルとはレコードに貼られるラベル名から転じた語で、レコード会社やその一部門の商号を意味する。
特にイギリスの1980年代、パンク以降のポップ音楽界では、4ADやファクトリー、クリエイション、ラフ・トレードといったインディー・レーベルが活況を呈し、スミスやストーン・ローゼスといった人気ロック・グループを数多く輩出した。これらのロック・グループの多くが、バーズやベルベット・アンダーグラウンドといった60年代のロック・グループに影響された、ギター・サウンドを主軸とした様式を持っており、これらの音楽様式を指してインディー・ロックと呼ぶこともある。これらのレーベルの多くが90年代には五大メジャーの傘下に入ってしまうこととなったが、依然インディー・ロックというジャンル名は誤解と論争をはらみつつ存続している。そのような音楽様式は、アメリカではオルタナティブ・ロックと呼ばれるのが一般的である。
インディー・レーベルは、レコード会社の主要機能のうち、制作と宣伝は自社で行うが、営業(販売)を他社に委託するケースが多い。そのため今日の大規模なインディー・レーベルは、メジャー・レーベルと流通面では遜色ない存在となっている。一方で、メジャー・レーベルが手を出しにくい実験的・先端的な音楽や、少数だが熱狂的な聴衆を持つ音楽を制作する小規模なインディー・レーベルも数多く存在し、音楽産業の活性化の一端を担っている。
日本国内では、日本レコード協会に加盟していない小規模レコード会社やそこからリリースされる音楽をインディーズと称するのが通例である。ゆえにエイベックス・トラックスやトイズ・ファクトリーといった、日本レコード協会に属しながら五大メジャーとは資本関係を持たないレコード会社は、国際的な基準ではインディー(あるいはマイナー・レーベル)であるが、日本国内ではメジャー・レーベルとして扱われるのが普通である。
[増田 聡]
『サイモン・フリス著、細川周平・竹田賢一訳『サウンドの力――若者・余暇・ロックの政治学』(1991・晶文社)』▽『ロジャー・ウォリス、クリステル・マルム著、岩村沢也・大西貢司・保坂幸正・石川洋明・由谷裕哉訳『小さな人々の大きな音楽――小国の音楽文化と音楽産業』(1996・現代企画室)』▽『岸本裕一・生明俊雄著『J-POPマーケティング――IT時代の音楽産業』(2001・中央経済社)』