日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーズ」の意味・わかりやすい解説
バーズ
ばーず
Byrds
1960年代アメリカのウェスト・コースト・ロックを代表するグループ。ビートルズの登場に刺激を受けたフォーク・シンガーたちによって始められたバンドである。エレクトリック12弦ギターとスリー・パートのコーラスが特徴であった初期のサウンドはフォーク・ロックと称され、その後、彼らはサイケデリック・ロックを経て、カントリー・アンド・ウェスタンに接近していった。バーズの歩みは1960年代中期から1970年代初頭までのロサンゼルスのロックン・ロールの趨勢(すうせい)そのものである。また、たび重なるメンバー・チェンジが、このバンドをめぐるロックの人脈図を形成してゆくことになる。
1964年ロサンゼルスで結成され、メンバーはロジャー・マッギンRoger McGuinn(1942― 、ボーカル、ギター)、デビッド・クロスビーDavid Crosby(1941―2023、ボーカル、ギター)、ジーン・クラークGene Clark(1944―1991、ボーカル、パーカッション)、クリス・ヒルマンChris Hillman(1942― 、ボーカル、ベース、マンドリン)、マイケル・クラークMichael Clarke(1946―1993、ドラム)。
1965年夏、ボブ・ディランの「ミスター・タンブリン・マン」のカバー曲が英米のヒット・チャートのトップになり、翌年もフォーク・シンガー、ピート・シーガーの「ターン・ターン・ターン」をアレンジ・カバーした曲がトップ10に入るヒットとなる。「霧の8マイル」が収録された1966年のアルバム『霧の5次元』はジョン・コルトレーンの影響を受け、またサイケデリックな感覚も取り入れ、バンドの音楽性は発展する。『昨日よりも若く』(1967)からは「ロックン・ロール・スター」「マイ・バック・ページス」のヒット曲が生まれただけでなく、マッギン、クロスビー、ヒルマンのソングライティングも進化し、『名うてのバード兄弟』(1968)では大がかりなサウンド・プロダクションを導入する。その一方で、バンドの内の対立も表面化し、クロスビーらが脱退。その後マッギンとヒルマンによる新生バーズはナッシュビルに向かい、カントリー・ロック・アルバム『ロデオの恋人』(1968)を制作。しかし、1968年にはヒルマンが『ロデオの恋人』でフィーチャーされたグラム・パーソンズGram Parsons(1946―1973、ボーカル、ギター)とともに、フライング・ブリトウ・ブラザーズを結成するため脱退。マッギンは天才ギタリスト、クラレンス・ホワイトClarence White(1944―1973)をフィーチャーし、カントリー・ロックを追求し、1973年までバンドは存続した。
[中山義雄]