日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォラス」の意味・わかりやすい解説
ウォラス
うぉらす
Graham Wallas
(1858―1932)
イギリスの政治学者、社会学者。1881年オックスフォード大学卒業。ハイゲート・スクールの教師を経て、1895年にロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの講師となり、1914年から1922年まで教授を務めた。その間たびたび渡米し、大学の講座を担当したり、講演旅行を行ったりした。またフェビアン協会の会員となり(1886~1904)、とくに加入以来1895年までその執行委員を務めた。人間が手段を合理的推論によって選ぶとする「主知主義」の一面性を超え、政治のなかにある情緒や衝動の観察の必要を説いた。潜在意識と意識による思考の過程はともに、社会・政治生活と固く結び付いていると考えたのである。また、テクノロジーの発達による「大社会」の出現が人間生活に及ぼすゆがみを指摘し、専門家の対応を求めた。主著に『政治における人間性』(1908)がある。
[小林丈児]
『石上良平・川口浩訳『政治における人間性』(1958・創文社)』