出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
人間の本性。人間らしさ。人間の事実上の特性をさすだけでなく、あるべき理想の姿をも意味する。古代ギリシア思想に由来する人間観では、知的理性に人間の特質を認め、ホモ・サピエンス(英知人)という人間規定が優先する。これに対してヘブライズムの伝統を継ぐ人間観では、神につくられる人間としてのホモ・レリギオスス(宗教人)という人間規定が行われる。近代の人間観は、一方で知性を根拠とする自己完結的な自然本性を想定しつつも、他面で堕罪(だざい)から救済へと創造される可変的性格をも受容したため、知的な技術開発の進歩や社会構造の合理的変革に人間性の現れを認める思想を生み、ホモ・ファベル(工作人)としての創造的人間という規定が一般的になった。また、生の哲学では、知性に加えて感情や意欲などの連関からなる全人的生活体に人間性を認め、実存哲学は理性や感性といった特定の本質で規定できない自由な可能性を人間性と考える。
[柏原啓一]
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