大社会(読み)だいしゃかい(英語表記)the great society

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大社会」の意味・わかりやすい解説

大社会
だいしゃかい
the great society

イギリス政治学者G・ウォラスによって提起されたことばで、経済学の大工業the great industryに対して、それによって大きく変貌(へんぼう)させられた現代社会の姿をいう。大工業を発達させた科学技術は、エネルギー限界や人や商品の輸送の限界、およびコミュニケーションの限界などを一挙に取り去り、われわれの生きている社会を世界大の規模に拡大するとともに、人間活動のあらゆる側面を結び付けた。このため、それまでの人間の本能習慣知性の多くが通用しないものとなり、新しい社会に対する対応を改めて求められることになる。後の大衆社会論前提の一つとなった用語である。

[庄司興吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大社会」の意味・わかりやすい解説

大社会
だいしゃかい
great society

イギリスの政治,社会学者 G.ウォーラスが現代社会を評して用いた言葉。彼は,現代における機械,交通,運輸,および通信の発達が文明生活の状態を一変させ,人々の作業と思考感情とをきわめて広範な世界的規模で結合させるとともに,それに伴う諸問題が生じてきたことを述べ,こうした社会状態を大社会と呼んで,それに固有の注目を集めるべきことを主張した。彼は,こうした大社会の発展がはたしてこれまで考えられていたように,正しい方向をさしているか否かを疑問視している。「大社会」の語は現代社会の特質を指摘するために用いられた最初の用語であり,やがて大衆社会観念に発達した。

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世界大百科事典(旧版)内の大社会の言及

【ウォーラス】より

…ウォーラス以後,政治は人間の無意識の部分とも結びつけられるようになり,彼の視角は,C.E.メリアムH.D.ラスウェルを中心とするアメリカの行動論的政治学に大きな影響を与えた。またテクノロジーの発達によって環境の規模が世界的に拡大したとする彼の《大社会The Great Society》(1914)は,今日いわれている大衆社会状況を早い時期に的確に指摘している。【岡村 忠夫】。…

※「大社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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