日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォン・カーウァイ」の意味・わかりやすい解説
ウォン・カーウァイ
うぉんかーうぁい / 王家衛
(1958― )
香港(ホンコン)の映画監督。香港出身で、テレビと映画の脚本家から1988年の『いますぐ抱きしめたい』で映画監督になった。これはチンピラたちの生態を描いたペーソス豊かなアクションものである。続く『欲望の翼』(1990)も同傾向の作品であるが、いっそう洗練され、さらに濃密なデカダンスの味わいに達している。これにさらにユーモアと詩情を加えた1994年の『恋する惑星』にいたって日本でもとくに若い層に熱烈なファンを得るようになった。1997年の『ブエノスアイレス』はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞する。この作品は香港の中国返還のその年に、あえて香港とは地球の逆に位置するアルゼンチンに行って、いわば国を捨て世界をさまよう中国人の悲哀を見つめたものであり、植民地であるがゆえに自由と繁栄と世界の先端をゆく感覚を得ることができたという逆説的な香港のあり方の挽歌をうたっている。
[佐藤忠男]
資料 監督作品一覧
●王家衛
いますぐ抱きしめたい〈旺角卡門〉(1988)
欲望の翼〈阿飛正傳〉(1990)
楽園の瑕(きず)〈東邪西毒〉(1994)
恋する惑星〈重慶森林〉(1994)
天使の涙〈墮落天使〉(1995)
ブエノスアイレス〈春光乍洩〉(1997)
花様年華〈花様年華〉(2000)
2046 2046(2004)
愛の神、エロス~「若き仕立屋の恋」 Eros - The Hand(2004)
マイ・ブルーベリー・ナイツ My Blueberry Nights(2007)
それぞれのシネマ~「君のために9千キロ旅をしてきた」 Chacun son cinéma - I Traveled 9000 Km to Give It to You(2007)
グランド・マスター〈一代宗師〉(2013)