映画監督(読み)エイガカントク(英語表記)film director

デジタル大辞泉 「映画監督」の意味・読み・例文・類語

えいが‐かんとく〔エイグワ‐〕【映画監督】

映画製作の際に、俳優の演技指導のほか、撮影・音楽・美術・編集などを指揮し、統一した一つの作品にする人。
[類語]演出家監督ディレクタープロデューサー舞台監督助監督

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精選版 日本国語大辞典 「映画監督」の意味・読み・例文・類語

えいが‐かんとくエイグヮ‥【映画監督】

  1. 〘 名詞 〙 脚本カット割り、俳優の演技指導、美術・音楽・衣装選択など、映画製作の全過程を指揮し、映画作品を統一的に演出・創造する人。
    1. [初出の実例]「若きエーゼンステーンは映画監督として傾向以外の何ものをも認めない」(出典:共産主義党派文芸を評す(1927)〈新居格〉三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「映画監督」の意味・わかりやすい解説

映画監督
えいがかんとく
film director

映画製作において創作過程全体を指揮し、作品を完成に導く創造面の総責任者。ほかの製作スタッフと協働しながらも、撮影、照明、美術、編集、演技など、創造にかかわるすべての領域を統括し、作品の最終形に責任を負うのが通例である。監督の役割は、時代とともに変化してきた。典型例はアメリカの場合で、草創期の監督は映画製作全体に大きな発言力をもち、D・W・グリフィスのように、自らの志向を映画全体に反映させることも可能だった。だが、スタジオ・システムの浸透とともに、しだいにその裁量範囲は限定されていく。スタジオ・システムのもとでは、芸術的実践よりも経営の論理が優先されるからである。強大な権限をもつプロデューサーの指揮のもと、映画生産の効率性が追求され、製作の分業化が促進されるなか、監督の個性や影響力は後退し、希薄化していった。また、巨額の製作費を必要とするトーキーの到来で、危険度の少ない製作方式への傾斜はますます強まっていった。この時代、ジョン・フォードやアルフレッド・ヒッチコック、ウィリアム・ワイラーのように、独自性を発揮するとともに興行的にも成功を収めた監督もいたが、多くの場合、観客の動員力となったのは、監督ではなくスターの名声であった。

 しかし1950年代から1960年代にかけて、監督の位置づけに変化が起こる。スタジオ・システムおよびスター・システムが弱体化していったこと、映画監督を映画作品の「作家」とみなす作家主義がフランスでおこり一世を風靡(ふうび)したこと、ミケランジェロ・アントニオーニやフェデリコ・フェリーニ、イングマール・ベルイマンら、自立的な創作活動を行うヨーロッパの監督が国際的に脚光を浴びるようになったことなどが起因し、アメリカでも監督の個性が重視され始める。アーサーペンやスタンリー・キューブリックら、独創的な創作スタイルをもつ監督が頭角を現すのはこの時期である。さらに1970年代、フランシス・フォード・コッポラ、マーティンスコセッシ、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグといった映画大学出身の新世代監督が登場し、彼らが芸術的にも興行的にも成功を収めたことで、監督名が作品の評価や興行成績を左右する重要な要素となる時代が訪れるようになった。日本でも、撮影所システムが瓦解(がかい)する1980年代から、独立プロダクションの製作や自主製作など、製作方式が急速に変化していくなかで、監督が映画創作の中心に位置するという認識がますます強まると同時に、広く浸透していった。

[奥村 賢 2022年6月22日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「映画監督」の意味・わかりやすい解説

映画監督
えいがかんとく
film director

シナリオに従って映画の制作を指導し,場面の撮影や演技の指導を行い,撮影終了後はショット (画面) の編集や音楽の録音を監修し,一個の作品としての映画を完成させる者。しかし,映画制作の企画やシナリオの段階からそれに関与する場合が多く,監督みずから制作者と脚本家を兼ねることも多い。また撮影台本を用いず,職業俳優も使わず,ドキュメンタリー的,即興的な演出をする監督もいる。第2次世界大戦後,特にこの傾向が著しくなり,A.アストリュクによる「カメラ=万年筆」説や,作家主義が唱えられたが,これは映画監督を作家と同一視する考え方や現実の重視から出発している。

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百科事典マイペディア 「映画監督」の意味・わかりやすい解説

映画監督【えいがかんとく】

映画作品の創作の全過程を監督し,演出する責任者。その著作権については各国の事情がまちまちである。日本では監督は公表権を持つが,著作権は製作者に帰すとされ,問題が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の映画監督の言及

【映画】より

…バザンの下に育った批評家であり映画作家でもあるヌーベル・バーグの影響が世界的に広がるにつれ,やがて1960年代以降,〈映画の芸術性〉よりも,〈映画そのものの探究〉に,人々の関心は向かうようになる。
【映画体系を築いた人々】
 映画は芸術か産業かという果てしない抽象的な論議をよそに,〈芸術〉と〈産業〉のはざまで闘いながら真の映画体系を築き上げてきたのが,映画の草創期に映画を天職として選び,さまざまな映画的な〈話術〉を映画づくりの実際において探究しつつ作品に昇華してきた何人かの偉大な映画監督たちであった。それはグリフィス,シュトロハイム,エイゼンシテイン,ムルナウ,次いでトーキー時代になっても活躍したチャップリン,フォード,ホークス,ラング,ドライヤー,ルノアール,ビゴ,ブニュエル,ヒッチコックらであり,日本では伊藤大輔から山中貞雄を中心にして小津安二郎も含めた〈鳴滝組〉に至る監督たちである。…

※「映画監督」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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