日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウサギコウモリ」の意味・わかりやすい解説
ウサギコウモリ
うさぎこうもり / 兎蝙蝠
long-eared bat
[学] Plecotus auritus
哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。耳がウサギのように長いので、この名がある。インド以北のアジア、ヨーロッパ、アフリカ北部に分布し、国内では北海道、本州、四国より知られ、富士山や尾瀬の亜高山地帯に数が多い。前腕長3.5~4.5センチメートル、頭胴長4~5センチメートル、翼開長15センチメートル、耳は卵形で、長さはほぼ体長に等しく、その約半分の長さの耳珠(じしゅ)がある。体の上面は黄褐色または灰褐色。洞窟(どうくつ)、樹洞、家屋などに小群または単独ですみ、日没後にねぐらを離れ、森林内の樹間を緩やかに飛び回り、メイガ科、ヤガ科、シャクガ科などの鱗翅(りんし)目やヒロバカゲロウ科などの脈翅(みゃくし)目のほか、夜間に活動する昆虫を捕食する。とらえた昆虫は休息所に運び、はねを取り去ってから食べる。眠るときは耳を腕の下に畳み込み、細長い耳珠だけをアンテナのように立てている。気が荒く、共食いすることもある。6~7月に1子を産む。10月なかばから3月中旬まで洞窟などで冬眠する。ミールウォーム(チャイロゴミムシダマシ)やハエの幼虫、蛹(さなぎ)などの餌(えさ)で飼育することができる。
[吉行瑞子]