ウスカワマイマイ(英語表記)Acusta despecta sieboldiana

改訂新版 世界大百科事典 「ウスカワマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ウスカワマイマイ
Acusta despecta sieboldiana

畑や庭にもっともふつうなまるみのあるカタツムリ。マイマイ科の巻貝。殻は高さ2cm,太さ2.5cmくらいの球卵形で比較的薄いのでこの名がある。巻きは5階。黄白色であるが,軟体の外套がいとう)膜の模様が透けて見えるので黒斑があったり全体が黒みがかったりする。成貝になってもふつうのカタツムリのようには殻口が厚くなって広がったりしない。気温が10℃以上になると活動するが,主として夜間活動する。雌雄同体ではあるが,交尾して互いに精子を交換し初夏と秋に産卵する。卵は2mmくらいの球形で,一度に20個内外を土中に穴を掘って産む。卵は20日内外で孵化(ふか)し,翌秋には成貝になって翌々春に産卵し,その後数ヵ月で死亡するなど寿命はだいたい1年半くらいである。北海道から九州まで分布し,畑や庭にすみ,野菜や草花若芽を夜食害するが,昼は土中や物陰に隠れている。沖縄にも分布するが,殻がやや厚く,成長肋が明らかで別亜種になっている。海岸の灌木の間に多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウスカワマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ウスカワマイマイ
うすかわまいまい / 薄皮蝸牛
Siebold's globular snail
[学] Acusta despecta

軟体動物門腹足綱オナジマイマイ科のカタツムリ。A. sieboldiana異名。日本ではもっとも普通にみられるカタツムリで、日本全土および朝鮮半島に分布している。畑や庭園にすんで木の苗や野菜を食害するほか、海岸のハマユウの間にも多い。殻は球形で、殻高20ミリメートル、殻径25ミリメートルに達し、殻質は薄い。螺層(らそう)は5階で、殻表はこはく色から紫褐色などであるが、色帯はまったくない。殻口は広く大きいが、外唇はほかのマイマイ類のように肥厚していない。軟体の外套膜(がいとうまく)は黄白色のものから紫褐色の斑紋(はんもん)のあるものまであって透けてみえるが、殻の色と一致していない場合もある。初夏と秋に地面に産卵する。

[奥谷喬司]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウスカワマイマイ」の意味・わかりやすい解説

ウスカワマイマイ
Acusta despecta; globular snail

軟体動物門腹足綱オナジマイマイ科。殻高 2cm,殻径 2.5cm。殻は薄質で球卵形,螺塔は小さく円錐形で螺層は5階。殻表は淡黄色ないし紫褐色で,色帯はない。体層は特に大きく,丸い。殻口は広くて丸く,成貝になっても殻口縁は厚くなることはない。臍孔は狭く開く。外套膜は淡黄色より黒色まであり,斑点状のこともある。日没から日の出の間に活発に行動し,畑の野菜や庭の花壇を害することがある。産卵期は初夏と秋。雌雄同体であるが他個体と交尾し,白い球形の卵を1回に約 40個を土中に穴を掘って産む。日本全土の平地に多い。寄生虫の1種膵蛭 (すいてつ) の中間宿主となる。

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