日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマユウ」の意味・わかりやすい解説
ハマユウ
はまゆう / 浜木綿
[学] Crinum asiaticum L. var. japonica Bak.
ヒガンバナ科(APG分類:ヒガンバナ科)の海浜生の多年草。植物学上の和名はハマオモト(浜万年青)であるが、一般にはハマユウのほうが通りがよい。偽茎は直立し、高さ30~50センチメートル。葉は鱗茎(りんけい)状に重なり合い、内部は白く、木綿(ゆう)(白い幣(ぬさ))を思わせるので、ハマユウの名がついた。花は7~9月、花茎の先に十数花集まって開き、芳香がある。白色で花筒は長さ5~6センチメートル、花被片(かひへん)は長さ7~9センチメートル。秋に花茎が地上に倒れ、やや球状で径2~3センチメートルの種子を播(ま)く。分布の北限界は年平均気温15℃の等温線とほぼ一致し、それを結んだラインを小清水卓二はハマオモト線Crinum lineと名づけた。
[湯浅浩史 2019年1月21日]
文化史
古代から目をひいたらしく、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)は『万葉集』で「み熊野の浦の浜木綿百重(ももへ)なす心は思へどただに逢(あ)はぬかも」(巻4・496)と詠んだ。『枕草子(まくらのそうし)』では「草は」のなかに浜木綿が4番目に名を連ねる。平安時代、大臣の大宴には、この葉で鳥料理を包んだ。葉柄は乾かすと粗いが強い紐(ひも)になり、台湾のヤミ族は石灰を入れた壺(つぼ)をそれでぶら下げた。また、バタン島では葉をいぶして、蚊遣(かやり)に使った。
[湯浅浩史 2019年1月21日]