改訂新版 世界大百科事典 「うたごえ運動」の意味・わかりやすい解説
うたごえ運動 (うたごえうんどう)
労音とならぶ戦後日本の音楽文化運動。1948年,生活と音楽とを結び付けることを目的として,関鑑子(あきこ)(1899-1973)をリーダーとする中央合唱団によって始められた。運動は職場,学校と地域とが交流する形で全国的に広がった。53年には〈うたごえは平和の力〉のスローガンを掲げて,全国合唱団会議を創設,54年には原爆禁止運動と結び付いて〈日本のうたごえ〉運動として発展した。運動は60年代前半に最盛期を迎えたが,その後大衆運動の凋落に伴って衰退した。うたごえ運動はサークル運動と密接に関連していたが,サークルの知的活動面が〈学習〉で,情操的側面がうたごえ運動といえよう。それは社会の悪を糾弾し,矛盾を変革する活力を音楽によってつちかおうとするものであり,ロシア民謡に託された想いには革命的ロマンがあった。なお,うたごえ運動の歌のテキスト《青年歌集》は1948-69年に10集を刊行している。
執筆者:上野 博正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報