改訂新版 世界大百科事典 「エクソン会社」の意味・わかりやすい解説
エクソン[会社]
EXXON Corporation
世界最大の石油会社。本社テキサス州アービング。〈エッソESSO〉(Standard Oilの頭文字SOをもじって命名)の商標で知られる。原油生産および処理量,石油製品および天然ガス販売量,売上高および利益額のすべてにおいて石油メジャーの首位を占めるばかりでなく,世界最大の事業会社であり,かつ,100を超える国々で石油事業を営む典型的な多国籍企業の一つである。エクソンは,ジャージー・スタンダードStandard Oil Co.(New Jersey)が1971年社名変更したものであるが,カリフォルニア・スタンダード(シェブロン・テキサコ),インディアナ・スタンダード,オハイオ・スタンダード等の諸社もあり,これらはかつてはスタンダード・オイル・グループにあったものである。これらの会社の起源は,ロックフェラー財閥の創始者J.D.ロックフェラーが1862年にオハイオ州クリーブランドで始めた石油精製工場であるが,彼は70年には同業数社を糾合してオハイオ・スタンダードStandard Oil Co.(Ohio)を資本金100万ドルで設立した。70年代の激しい競争を〈残酷無比〉といわれるやり方で勝ち抜き,競争業者をつぎつぎに傘下に収めていった。こうして全国の精製能力の大部分を支配するに至り,82年トラスティー方式によるトラストをニュージャージー州に結成した(ジャージー・スタンダード)。これがアンチ・トラスト法であるシャーマン法(1890成立)にふれ92年に解体され,その後99年に再結集したものの再び1911年33の企業に分割された。このうち最大のものがジャージー・スタンダードであるが,ニューヨーク・スタンダード(現社名モービル)もそのうちの一つであった。ジャージー・スタンダードは27年純粋持株会社になり,71年〈エクソンEXXON〉(この名前はコンピューターで打ち出した多くの候補の中から,どこの国でも発音が同じで悪い意味にならないものという基準で採用)に社名変更した。
当初スタンダード・グループは,競争の激しい産油部門には進出せず,精製・販売部門から出発した。しかしその後,需要の急増に応じて精製・販売設備を拡充していく過程で原油供給源の確保に乗り出し,1911年までに海外にも原油源をもつ一貫操業企業に変身した。ところが,トラスト解体の結果,同社は原油生産および輸送施設の大半を失い一貫操業バランスを崩してしまった。このため,販売シェアを維持・拡大するために,新しい原油供給源を獲得する必要に迫られ,同社は海外投資の重点を販売部門から産油部門へ転換し,利権獲得,探鉱の促進,既存産油会社の買収等の活動を相次いで展開していった。こうして同社は,30年代にはベネズエラでガルフ・オイル,ロイヤル・ダッチ・シェルと3社で資源の分割支配体制を確立し,さらに,50年代には中東においても共同支配体制を確立,原油の安定調達に成功するとともに,世界最大の石油企業としての地位を確立していった。70年代に起こった2度の石油危機以降,エクソンは新しい事態に対処するために,原油価格の高騰によって獲得した巨額の利潤をもとに,OPEC構成各国以外の地域での石油・天然ガス開発,石油代替エネルギー開発,エレクトロニクス情報関連部門や鉱物資源部門等,多角化をすすめたが,80年代に入って見直しが行われ,代替エネルギー開発からは撤退した。海外での探査・生産・精製・販売が56%を占め,アジア・太平洋地域のほか90年代に入り中国やロシアでの探査にも積極的である。売上高997億ドル(1994年12月期)。99年モービルを買収,世界最大の総合石油会社,エクソン・モービルとなった。
→スタンダード・オイル[会社]
執筆者:熊坂 敏彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報