改訂新版 世界大百科事典 「エゾシロチョウ」の意味・わかりやすい解説
エゾシロチョウ
black-veined white
Aporia crataegi
ヨーロッパから北海道まで連続して分布する旧北区の代表的な鱗翅目シロチョウ科の昆虫で,北海道産の亜種A.c.adherbalはもっとも大きい。イギリスでは1926年ごろ絶滅した。開張6.5~7cm。雌の前翅中央部は半透明である。年1回,6~7月に発生する。雌はリンゴ,ボケ,サンザシなどバラ科植物の葉裏に黄色の卵を最高200個ほど,1層,まれに2層の塊として産みつける。孵化(ふか)した幼虫は葉で巣をつくって集団で生活し,3齢幼虫で巣の中で越冬する。春先の幼虫は幹や枝に定住し,果樹に大害を与えることがある。食樹の枝で集団蛹化(ようか)することが多い。
近似種にやや小型(開張約6.5cm)のミヤマシロチョウA.hippiaがある。雄はやや黒い鱗粉が多い。雌の前翅はやはり半透明である。東アジア特産種で,日本では長野県を中心とする山地に限って分布し,高山チョウとして知られる。生活史はエゾシロチョウと同様であるが,幼虫はメギ,ヒロハノヘビノボラズなどを食べる。卵はエゾシロチョウより少し大きく,葉裏に2~3層をなして産みつけられる。幼虫の集団行動もエゾシロチョウに似るが,越冬後は老熟するまで巣を拡大しつつその中にすみ,集団蛹化は見られない。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報