日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンザシ」の意味・わかりやすい解説
サンザシ
さんざし / 山査子
[学] Crataegus cuneata Sieb. et Zucc.
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。高さ約2メートルで、枝を多く分け、短枝の変化した刺(とげ)がある。葉は互生し、倒卵形、長さ3~6センチメートルで上部は浅く3~5裂して鋸歯(きょし)があり、基部はくさび形である。托葉(たくよう)は半卵形で縁(へり)に鋸歯がある。5月に散房花序をなして径約1.5センチメートルの白色花が5~7個開く。花弁は扁円(へんえん)形で5枚、雄しべは20本で葯(やく)は赤く、雌しべは4~5本ある。果実は扁球形、径約2センチメートルのなし状果で、頂端に萼片(がくへん)が残り、9~10月に赤く熟す。果実が黄熟するものをキミノサンザシという。中国中部原産で享保(きょうほう)年間(1716~1736)には日本に入っていた。庭木や盆栽にし、繁殖は実生(みしょう)、挿木による。果実はクエルセチン、クロロゲン酸、オレアノール酸などのほか消化酵素を含み、消化促進作用があり、健胃、整腸薬に用いる。
類似種のセイヨウサンザシC. laevigata (Poir.) DC.(C. oxyacantha L.)はヨーロッパ、北アフリカに分布し、メイフラワーとよばれ、小高木となり白色一重の5弁花を開く。日本ではセイヨウサンザシの園芸品種で紅色八重咲きのアカバナサンザシがよく植栽される。
[小林義雄 2020年1月21日]
文化史
中国では古くから知られ、紀元前2世紀の『爾雅(じが)』に「」の名で載る。サンザシ属は中国に16種あるが、中南部のサンザシ(野山楂)と北部のオオミサンザシ(山楂大果変種、山里紅)が代表的で、後者は果実が2.5センチメートルにもなり、生食以外に竹の串(くし)に挿し氷砂糖をまぶした氷糖壺、ゼリー(山楂膏)、ジュース(山楂汁)などの加工食品が親しまれてきた。漢方ではサンザシの実を健胃、消化不良、強心などの薬に使う。江戸時代には渡来しており、鉢植えで観賞された(『増補地錦抄(ぞうほちきんしょう)』1710)。セイヨウサンザシはイギリスでは5月に咲き、メイフラワーMay flower(5月の花)とよばれる。ローマ時代から厄除(やくよ)けに使われ、伝説や俗信が多い。
[湯浅浩史 2020年1月21日]