エンジンオイル(読み)えんじんおいる(英語表記)engine oil

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンジンオイル」の意味・わかりやすい解説

エンジンオイル
えんじんおいる
engine oil

内燃機関用潤滑油のことで、エンジン油ともよばれる。運転条件の過酷な内燃機関の運動各部を潤滑するのに用いられる油で、通常、適当な精製鉱油清浄分散剤、酸化防止剤などを添加した高級潤滑油である。

 エンジンオイルには、ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、航空エンジン油があり、これらの需要は全潤滑油の約35%を占めている。

[難波征太郎]

ガソリンエンジン油

清浄性、酸化安定性、耐摩耗性などがとくに要求され、使用量の多い自動車用ガソリンエンジン油は、国内自動車メーカーにより1万キロメートルから1万5000キロメートルごと、あるいは1年間で1万キロメートル走行しない場合は1年ごとに交換するよう指定されている。さらに1990年代以降、省燃費や低温時の始動性向上のため低粘度マルチグレード油、合成油(ポリオレフィンエステルなど)を基油としたマルチグレード油、固体潤滑剤グラファイト、二硫化モリブデン)入りの油などが発売されている。温度による粘度変化が少ないことが望ましく、とくに低温における粘度が低いと始動性向上、燃費改善などの利点が生じる。粘度の表示法の一つとして、アメリカ自動車技術者協会Society of Automotive Engineersが規格化したSAE粘度番号がある。たとえば、よく用いられるSAE10W-30の最初の番号は、0(零下18℃)における粘度を示し、あとの番号は210(100℃)における粘度を示す。いずれの番号も小さいほうが粘度が低いことを意味し、低温での粘度が小さく、高温での粘度が比較的高いものがマルチグレード油として優れている。

[難波征太郎]

ディーゼルエンジン油

自動車用ディーゼルエンジン油は各種性能のものがあるが、高性能のものの更油(こうゆ)期間(オイルを交換する期間)は1万キロメートルに達している。また、マルチグレード油であるSAE20W-40から15W-40程度のものが中心であるが、SAE10W-30も発売されている。

 船用ディーゼルエンジン油は、ベアリング類の潤滑を行うシステム油と、シリンダーの潤滑用のシリンダー油がある。前者は酸化防止性、後者は清浄性、酸中和性の優れたものが適している。船用ディーゼルエンジンは燃料として硫黄(いおう)分の多い重油を使用することが多いため、燃焼により生ずる硫酸二酸化硫黄を中和し、エンジンを清浄に保つ必要がある。

[難波征太郎]

航空エンジン油

使用条件がきわめて過酷であるため、一般的には鉱油を基油として用いることができず、アジピン酸エステルのような合成油が用いられる。

[難波征太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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