改訂新版 世界大百科事典 「オオクボシダ」の意味・わかりやすい解説
オオクボシダ
Xiphopteris okuboi (Yatabe) Copel.
山地の樹幹や岩上に生じるヒメウラボシ科の常緑性の小さなシダで,日本のものでは大きさが10cmをこえることはまれである。根茎は短く,斜上し,褐色,膜質,披針形で,長さ2mmくらいの鱗片をつける。葉は叢生(そうせい),葉柄は短く,赤褐色の開出毛をつける。葉身は線状披針形,羽状に深裂する。葉脈は単生,または上側に1~2個の支脈をつける。胞子囊群は楕円形,羽片の基部に1個あり,包膜はない。関東南部から西,本州の暖帯から四国,九州に分布し,台湾の高山にもある。明治時代の東大助教授大久保三郎が箱根で発見したのにちなんで,この名がつけられた。
ヒメウラボシ科Grammitidaceae
10属約450種が熱帯を中心に,主として蘚苔林中に生育している。小型であるが,コケシノブ科のように,単純に向かう進化をしたものと考えられる。胞子の形のままで細胞分裂を行っている点もコケシノブ科と似ているが,系統的には両者に直接の関係はない。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報