オシログラフ(読み)おしろぐらふ(英語表記)oscillograph

翻訳|oscillograph

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オシログラフ」の意味・わかりやすい解説

オシログラフ
おしろぐらふ
oscillograph

被測信号に適した振動特性をもつ機械振動子を、被測電気信号の電磁作用を利用して振動させ、信号の時間的変化を記録または観測する装置の一種電磁オシログラフともいう。周波数のあまり高くない現象(実用的には2キロヘルツ以下)の観測に使われる。構造は各社の製品によって異なるが、振動子、光学系、記録部、電源部から構成され、これらが一つの箱に収められてコンパクトなものになっている。

 振動子は寸法をきわめて小さくし、固有振動数を高くした一種の反照検流計で、永久磁石の磁極片間に生ずる強力な磁界(1~2テスラ)内に2本のリン青銅ストリップ(細い線)を張り、その中央に微小な反射鏡を張り付けてある。2本のストリップに、信号に比例する往復電流を流すと、電磁作用により前後にたわむので、反射鏡が傾き、反射光に電流の強弱に応じたいわゆる「振れ」を生じる。これをスクリーンで観測したり、写真フィルムに記録したりする。また、適当な制動力を得るため、振動子は流動パラフィン、シリコン油などに浸して用いる。信号を忠実に記録するには、信号に適した固有振動数や感度をもった振動子を選ぶことがたいせつである。とくに微小信号の測定には高感度のものを用いるが、これは安全電流が低いので、十分な注意が必要である。実際の場合、振動子は複数個設けられるものがほとんどで、6素子、18素子などのものがあり、各種のセンサーと併用して、機械や水管などの各部の振動・応力分布など、多現象の同時記録に便利である。

 なお、可動部分にペンを取り付け、一定速度で移動する記録紙の上に、直接、信号波形を描かせるものをペン書きオシログラフといい、工学的な現象のほか医学方面でも広く用いられている。なおペンにはインキ書き式、スクラッチ式、熱ペン式などがある。

[高尾利治]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オシログラフ」の意味・わかりやすい解説

オシログラフ
oscillograph

時間的に変化する電圧または電流の波形を表示または記録する測定器で,動作原理により,電磁型,陰極線型,多針電極型に大別される。多く利用されるのは電磁型と陰極線型である。電磁型は一種の可動コイル型反射検流計で,上下にリン青銅の細いストリップを張り,これに小型反射鏡とコイルを一体に取付けてあるが,回転の慣性モーメントを小さくして数 kHz程度までの電流変化に応答できる。反射鏡からの光点の記録には高感度印画紙 (暗室内で現像する) または特殊感光紙 (室内光で可視像となる) を用いる。可動コイルまたは可動鉄片にペンを直接固定するペン書きオシログラフも電磁型の一種であり,動作範囲は 100Hz程度までである。記録には,インキ,熱,放電などを用いる。陰極線型はブラウン管オシロスコープと通称されるもので,入力信号電圧 (すなわち被測定電圧) により電子ビームを振らせるので,動作範囲は非常に広く,数 GHzにまで及ぶものもある。表示にはブラウン管を用い,通常その水平軸 (時間軸) に時間に対応したのこぎり波形の掃引電圧をかけ,垂直軸に入力信号電圧をかける。垂直に2つの入力をもつ2現象型のものも多い。時間軸用の掃引電圧を入力電圧と同期させるために,遅延回路およびトリガ回路をもつ始動掃引方式のものを,日本では特にシンクロスコープと呼ぶことがある。標準型 (300MHz程度まで) のほか,進行波型ブラウン管を用いたもの (数千 MHz程度まで) ,超高周波の繰返し信号をストロボスコープの原理によって何点かサンプルして,それらの瞬時値を表示するサンプリング・オシロスコープ (20GHz近いものまである) ,単発現象の観測に蓄積型ブラウン管を用いたもの (10GHz程度まで,また像は数時間~数週間記憶できる) ,など用途によりさまざまの形式が開発されている。

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