オチョア(読み)おちょあ(英語表記)Severo Ochoa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オチョア」の意味・わかりやすい解説

オチョア
おちょあ
Severo Ochoa
(1905―1993)

アメリカの生化学者。9月25日スペインに生まれる。マドリード大学医学部を卒業。ドイツのハイデルベルク大学ベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所(現、マックス・プランク研究所)でマイヤーホーフに師事し、さらにオックスフォード大学で研究、1941年にアメリカに渡り、ワシントン大学からニューヨーク大学に移り、1946年から1954年まで薬学部教授、同年生化学教室主任となった。1956年にアメリカ市民権を獲得した。研究は生化学の広範な分野にかかわっている。初期には脂肪酸酸化のβ酸化(ベータさんか)経路に関与する酵素をグリーンDavid Ezra Green(1910―1983)やF・リネンなどとともに明らかにした。また糖の酸化的分解過程のTCA回路クレブス回路)の出発点である、アセチルリン酸オキサロ酢酸とからクエン酸が生成する反応を触媒するクエン酸合成酵素(当初は縮合酵素と彼が命名)を発見した。1950年代には核酸の研究に入り、ヌクレオシド二リン酸を重合して長鎖のポリヌクレオチド合成する酵素を1955年に発見した。これは天然RNAリボ核酸)合成の経路ではないが、RNAの生体外合成の最初の成功である。この研究により1959年、DNAデオキシリボ核酸)の合成に成功したコーンバーグとともにノーベル医学生理学賞を受賞。また核酸によるタンパク質合成において、各アミノ酸に対応する核酸の塩基グループ、つまりコドンをニーレンバーグなどとともに明らかにした。

[宇佐美正一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オチョア」の意味・わかりやすい解説

オチョア
Ochoa, Severo

[生]1905.9.24. スペイン,ルアルカ
[没]1993.11.1. マドリード
スペイン生れのアメリカの生化学者。マドリード大学で医学を学び,卒業 (1929) 後ハイデルベルク大学で O.マイヤーホフに師事し (30 ~ 31) ,筋収縮の生化学的研究を行う。マドリード大学研究所部長 (35) 。オックスフォード大学でビタミン B1 の働きについて研究した (38~41) のち,ニューヨーク大学医学助教授 (42) ,薬学教授 (46) となり,1954年以降生化学教授。彼の上げた業績のうちで最も重要とされるポリヌクレオチド・ホスホリラーゼの発見は,偶然になされたものであった。細菌の抽出液を用いてヌクレオチド二リン酸と無機リン酸とからヌクレオチド三リン酸をつくろうと試みたところ,ヌクレオチド二リン酸同士がリン酸を1つずつ放出しながら結合し,その結果,リボ核酸 RNAに近似した化合物が得られた (55) 。この反応を触媒した抽出液中の酵素 (彼がポリヌクレオチド・ホスホリラーゼと命名) は,細胞内で実際に RNAが合成されるときに働く酵素とは別物と判明したが,人工的に RNAをつくることを可能にした点で意義は大きい。この発見に対し,彼は A.コーンバーグとともに 59年ノーベル生理学・医学賞を与えられた。 61年からは,人工 RNAを使って遺伝暗号解読に取組み,数々の成果をあげた。

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