日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌクレオシド」の意味・わかりやすい解説
ヌクレオシド
ぬくれおしど
nucleoside
プリンおよびピリミジン塩基が糖(リボースやデオキシリボース)とN-β-グリコシド結合したものの総称(グリコシドは広義の配糖体と同義)。核酸の構成成分として広く存在する。結合は、塩基部分がプリン誘導体のときは9位の窒素、ピリミジン誘導体のときは3位の窒素と、糖の1'位の炭素との間にみられる。リボ核酸(RNA)に含まれ、糖部分にリボースをもつものはリボヌクレオシド(またはリボシド)とよばれ、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、イノシンなどがある。デオキシリボ核酸(DNA)に含まれ、糖部分にデオキシリボースをもつものはデオキシリボヌクレオシド(またはデオキシリボシド)とよばれ、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、チミジンなどがある。このほか、天然には、塩基部分がメチル基、ヒドロキシメチル基などで置換された誘導体、含硫ヌクレオシドなど多くの微量成分が存在し、また抗生物質・化学療法剤のピューロマイシン、コルジセピン、ネブラリンなどもヌクレオシドの一種である。通常、ヌクレオシドはRNAの水性ピリジン、水性ホルムアミド加水分解や、DNAの酵素分解(フォスフォジエステラーゼとモノエステラーゼ)によって調整される。プリンリボヌクレオシドは酸に対して比較的不安定である。なお、ヌクレオシドのグリコシド結合を開裂する酵素は、ヌクレオシダーゼとよばれる。
[景山 眞]
『水野義久・光延旺洋著『合成化学シリーズ ヌクレオシド・ヌクレオチドの合成』(1977・丸善)』▽『ウォルフラム・ゼンガー著、西村善文訳『核酸構造(上)』(1987・シュプリンガー・フェアラーク東京)』▽『三浦謹一郎編『構造生物学』(1998・朝倉書店)』