家庭医学館 の解説
おとなのようけつせいにょうどくしょうせいしょうこうぐん【おとなの溶血性尿毒症性症候群】
原因は不明ですが全身の小さな血管に血のかたまり(血栓(けっせん))が多数できて、そこを血液が通るときに赤血球(せっけっきゅう)が壊れて(細小血管性溶血性貧血(さいしょうけっかんせいようけつせいひんけつ))、血小板がどんどん消費されて減少してしまいます。
多くの症例で、なんらかの感染症が先におこっていて、最近では病原性大腸菌O‐157による集団食中毒で、多数の溶血性尿毒症症候群が発生して注目を集めました。
しかし、おとなでは先だつ感染症が明らかでない場合も多く、抗がん剤や経口避妊薬(けいこうひにんやく)の使用、妊娠・分娩(ぶんべん)が引き金になる場合もあります。
症状は、まず赤血球が壊れる溶血による貧血が現われ、そのために息切れや動悸(どうき)などの貧血症状がおこり、溶血の結果、黄疸(おうだん)もみられます。
その後、急速に腎臓の機能が低下し、急性腎不全の状態になります。また血小板の減少によって、四肢(しし)の皮下出血(ひかしゅっけつ)や点状の出血がみられます。
治療は、まず腎不全のコントロールが重要で、必要に応じて透析(とうせき)療法を行ないます。血小板の減少に対しては、血小板数が2万以下なら、血小板の輸血を行ないます。
乳幼児の死亡率は約10%ですが、おとなの死亡率は、50%と高率です。しかし最近では、血球以外の血液成分(血漿(けっしょう))を健康な血漿と交換する、血漿交換(けっしょうこうかん)療法が積極的に行なわれるようになり、死亡するほど重症になることは少なくなりつつあります。