日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニイシモチ」の意味・わかりやすい解説
オニイシモチ
おにいしもち / 鬼石持
deep-water cardinalfish
[学] Amioides polyacanthus
硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科オニイシモチ亜科に属する海水魚。奄美(あまみ)大島、慶良間(けらま)諸島、鹿児島県硫黄島(いおうじま)・竹島、台湾南部、フィリピン、インドネシア、モーリシャス島、レユニオン島、マダガスカルなど西太平洋とインド洋に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。体高は頭長よりすこし低い。頭部背縁は吻部(ふんぶ)で盛り上がり、吻端は丸みを帯びる。目は大きくて、吻長より著しく大きい。上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下に達しない。大きな上主上顎骨がある。上下両顎の前端近くに1~2対(つい)の後ろ向きの犬歯がある。それ以外に、上顎では絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、下顎では側面にわずかに肥大した歯と絨毛状歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には1~2列、口蓋骨には1列の歯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隆起線は円滑で、縁辺は鋸歯(きょし)状。鰓耙(さいは)は上枝に2本、下枝に8~9本。頭部と体は櫛鱗(しつりん)で覆われる。側線はよく発達し、尾びれ基底に達する。側線有孔鱗数は22~25枚。背びれは胸びれ基底上方から始まり、よく離れた2基で、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘10軟条。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、2棘8軟条からなる。胸びれは13~14軟条。腹びれは胸びれ起部下付近から始まる。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)またはわずかにくぼむ。体は銀白色がかった淡褐色で、体側の中央部に不鮮明な暗褐色の縦帯がある。目の下縁から主上顎骨の後端に向かう褐色の斜帯と尾柄(びへい)の後端に緑褐色の横帯がある。
水深70~280メートルの外洋の岩礁の岩底、急斜面、洞穴などに生息し、延縄(はえなわ)などでまれに混獲されることがある。日中は単独または小群で小さい岩穴に潜んでいることが多い。小さい底生の動物を食べる。最大全長は22センチメートルほどになる。
オニイシモチ亜科は、2014年(平成26)のDNAの分析結果を論文としてまとめた5人の魚類学者のうち、分類研究者である馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )とフレーザーThomas H. Fraserによって、オニイシモチ属とHolapogon属の2属2種に対して創設された。本亜科は大きな上主上顎骨をもち、第1背びれ棘が7~8本であることで他亜科と区別される。日本にはオニイシモチ属に属する本種しかいない。なお、オニイシモチ属をホタルジャコ科に含める研究者もいたが、多くの研究者はテンジクダイ科に帰属させている。
[尼岡邦夫 2022年1月21日]