改訂新版 世界大百科事典 「オニオコゼ」の意味・わかりやすい解説
オニオコゼ
Inimicus japonicus
カサゴ目オニオコゼ科の海産魚。単にオコゼと呼ばれることが多い。頭部背面の凹凸が激しく,鬼のような形相をするところから,オニオコゼの名がついたのであろう。本州中部から東シナ海にかけて分布するが,生息域は沿岸部から水深200m前後のやや深いところまで及ぶ。おもに砂泥質の海底にすみ,ときには砂に潜ることもある。体色は生息深度で異なり,沿岸性のものでは黒褐色か乳白色であるが,深海性では赤色または黄色を帯びる。体の前方はひらべったいが,後方では体高が高くなること,口が大きく,斜め上方に向くこと,体にうろこがなく,皮膚がぶよぶよすることが特徴。全長25cmになる。背びれには強いとげがあり,刺されると激しい痛みを感ずる。海底生活者で,胸びれの鰭条(きじよう)を使って海底をはって移動する。6月下旬から7月中旬にかけて産卵する。底引網などで漁獲される。冬がしゅんで,刺身,吸物,なべ物の材料となる。
執筆者:谷内 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報