オルト-パラ配向性(読み)オルトパラハイコウセイ

化学辞典 第2版 「オルト-パラ配向性」の解説

オルト-パラ配向性
オルトパラハイコウセイ
ortho-para orientation

芳香族化合物ニトロ化のような求電子置換反応を行うとき,すでに存在している置換基の種類によって,あらたに入るニトロ基の位置が異なってくる.たとえばフェノールでは,ニトロ基はヒドロキシ基に対し主としてオルトまたはパラ位に入り,アセトフェノンでは,アセチル基に対して主としてメタ位に反応が起こる.ヒドロキシ基のように,求電子置換反応をオルトまたはパラ位に起こりやすくさせる性質をオルト-パラ配向性といい,アセチル基のようにメタ位に起こりやすくさせる性質をメタ配向性という.また,オルト-パラ(メタ)配向性を示す基をオルト-パラ(メタ)配向基という.オルト-パラ配向基としては,ベンゼン核に直接結合する原子が非共有電子対をもつような基や,炭化水素基などがある.前者では,非共有電子対がベンゼン核のπ電子と共役するために,また後者では超共役などのため,オルトおよびパラ位の電子密度を高める効果(電子供与性)をもち,この位置に求電子反応が起こりやすくなる.メタ配向基としては,陽電荷をもつ基か,またはベンゼン核と直接結合する原子が電気陰性度の高いヘテロ原子多重結合で結合しているような基がおもなもので,前者は誘起効果のため,後者はこの二重結合がベンゼン核のπ電子と共役するために,この基に対してオルトおよびパラ位の電子密度を低める効果(電子求引性)をもつ.そのため,反応はこれらの位置で起こりにくくなり,相対的にメタ位に起こる.また,同じ理由から,オルト-パラ配向基は求電子置換反応を促進し,メタ配向基はこれを抑制する.オルト-パラ配向基およびメタ配向基の例を,その配向性の強い順に並べて示すと,次のようになる.

オルト-パラ配向基:N(CH3)2 > NH2OH > OCH3 > NHCOCH3 > OCOCH3 > CH3 > Cl,Br,I > C6H5 > CH2COOH

メタ配向基:N (CH3)3 > NO2CN > SO3H > CHO > COCH3 > COOH > COOCH3 > N H3

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルト-パラ配向性」の意味・わかりやすい解説

オルトパラ配向性
オルトパラはいこうせい
ortho-para orientation

芳香族化合物の置換反応でベンゼン核にすでに置換基が存在する場合に,第2の置換基が導入される位置が制限を受ける。ハロゲン,ニトロ基,スルホン酸基などを求電子置換反応で導入する場合,その生成物がオルトおよびパラ誘導体を主成分とするとき,すでに存在していた第1の基をオルトパラ配向性基と呼び,もし,メタ誘導体が主成分ならば,メタ配向性基と呼ぶ。その影響の大きさを比較すると次のとおりである。
オルトパラ配向性

メタ配向性

ハロゲンを除くオルトパラ配向性基は置換反応の速度を大きくし,ハロゲンおよびメタ配向性基は反応速度を小さくすることが知られている。

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