日本大百科全書(ニッポニカ) 「オンケン」の意味・わかりやすい解説
オンケン
おんけん
August Oncken
(1844―1911)
ドイツの経済学者。ハイデルベルクに生まれる。ハイデルベルク、ベルリン、ミュンヘンの各大学に学び、21歳より27歳まで農業に従事し、以後ウィーン農業専門学校講師、アーヘン工業大学教授を経て、1878年ベルン大学経済学教授となる。農業経済学者としては農業の近代化を擁護し、また経済学説史家としてはフィジオクラート(フランス重農主義者)研究の権威であり、彼の編集した『フランシス・ケネーの経済学的・哲学的著作集』(1888)は長く定本として重視された。しかし、やがて彼の関心は、ケネーの自由放任主義・自然秩序論からアダム・スミスの「見えざる手」(自由競争・自由貿易)へと移り、最後には、彼が思想史研究のうえで影響を受けていたドイツ歴史学派よりもアダム・スミスの思想に共鳴し、スミスの自由貿易論とカントの平和論との統合を考えた。
[島津亮二]