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お染/久松 おそめ/ひさまつ

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朝日日本歴史人物事典の解説

お染/久松

江戸前期の心中事件を起こしたとされる男女。大坂東横堀瓦屋橋の搾り油屋のひとり娘で16歳のお染と,子飼いの丁稚久松は恋仲であったが,お染は山家屋への嫁入り決まっており,しかも久松との間の5カ月になる子供を宿していた。宝永7(1710)年1月6日,一家中が山家屋へ招かれて留守の間,土蔵の前でお染は剃刀,久松は首をくくって心中を遂げたという。この事件は,いちはやくその月の内に歌舞伎化され,大坂の荻野八重桐座で「心中鬼門角」として上演されたほか,歌祭文となって流布した。また同年に紀海音作の浄瑠璃「袂の白しぼり」が上演され,以後これをもとに多くの書き替え狂言が作られた。そのなかで,浄瑠璃の「染模様妹背門松」(1767)と「新版歌祭文」(1780)とが,こんにちまで舞台に生命を保っており,前者は久松に父の久作が意見するくだりが中心となっている。後者では,武士の出である久松が主家の宝刀を詮議するというお家騒動仕立てのなかでお染久松の恋が描かれる。ふたりの心中の覚悟を知った久松の許婚お光が尼となって身を引く「野崎村」の段がよく知られ,東海林太郎の歌う「野崎小唄」(1935)にもよみこまれるなど,少年少女の悲恋物語の代表的存在として人口に膾炙した。ほかに,お染久松をはじめ7人の役をひとりで演じわける歌舞伎「お染久松色読販(お染の七役)」(1813)や清元の舞踊「お染」(1825)などがあり,榎本健一美空ひばりの主演で映画にもなっている。

(児玉竜一)

出典|朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版
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