カインの末裔(読み)カインノマツエイ

デジタル大辞泉 「カインの末裔」の意味・読み・例文・類語

カインのまつえい【カインの末裔】

有島武郎短編小説。大正6年(1917)発表北海道の厳しい自然の中で転落していく粗野な農民仁右衛門の姿を描く。

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精選版 日本国語大辞典 「カインの末裔」の意味・読み・例文・類語

カインのまつえい【カインの末裔】

  1. 小説。有島武郎作。大正六年(一九一七)発表。北海道のきびしい自然を背景に、無知で野性的な小作人仁右衛門の悲惨な生活を描く。作者の文壇的声価を確立したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「カインの末裔」の意味・わかりやすい解説

カインの末裔 (カインのまつえい)

有島武郎の短編小説。《新小説》1917年(大正6)7月号に発表。題名旧約聖書の《創世記》にみえるカインに由来する。無知で奔放で自然人的な下層小作人広岡仁右衛門が,北海道の酷烈な自然とたたかいたくましく生きるが,隷従的な生き方の他の小作人たちとなじめず,農場主の権力にもうちかてず,悲運も重なって,あてもなく農場を去る悲劇を描く。開拓農場の隷従的な労働実態もリアルに描き出している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カインの末裔」の意味・わかりやすい解説

カインの末裔
かいんのまつえい

有島武郎(たけお)の短編小説。1917年(大正6)7月『新小説』に発表。一部改稿して、翌年2月新潮社刊『有島武郎著作集』第3集に収録。「自己を描出したに外ならない『カインの末裔』」(1919・1『新潮』)で作者自身が述べているように、無知で野性的な主人公仁右衛門が、「生きねばならぬ激しい衝動」に動かされて、農場社会からは疎外され、北海道の過酷な自然とも闘って敗れる「苦しい生活の姿」を描く。主人公には、実際に有島農場で働いていたモデルが確認されているが、作者自身の「生に対する執着」という人間認識を仮託した人物であることは、自註(じちゅう)に明らかである。このほか、聖書に取材した神話的な題名の問題や、農場問題との関係など、多様な側面をもっている。

[山田俊治]

『『カインの末裔』(角川文庫)』

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