日本大百科全書(ニッポニカ) 「かご形誘導機」の意味・わかりやすい解説
かご形誘導機
かごがたゆうどうき
squirrel cage induction machine
回転子の導体の両端をすべて短絡した「かご形構造」のかご形導体を採用した誘導機。三相かご形誘導機、単相かご形誘導機がある。三相かご形誘導電動機は三相交流で回転磁界を生成し、かご形回転子を利用しており、もっとも広く使われている交流電動機である。
かご形回転子は、円周上に配置される複数の棒状の導体の両端を端絡環(たんらくかん)に溶接またはろう付けして製作される。リス小屋の回し車に似ていることから、英語ではリスかご回転子squirrel cage rotorともよばれる。小中容量の誘導電動機では、導体と端絡環のほかに冷却用のファンなどもアルミニウムのダイカスト(アルミ素材の鋳物)により鋳造され、一体構造となっている。三相かご形誘導機は構造が単純なので安価であり、回転子がすべて金属でできているため高熱に耐えることが可能で過負荷に強く、電気ブラシやスリップリング(固定ブラシと組み合わせて、回転子と固定子との間を連続的に電気的に接続する導体回転リング)のような摩耗部分がないため、保守が簡単で堅牢(けんろう)である。
商用電源でじか入れ駆動した場合、始動電流が大きい。そのため大型の電動機では始動器を用いることがある。かご形誘導電動機は電源周波数が一定であれば回転速度がほぼ一定速度となる。1980年代以降はインバーターにより周波数を変更するVVVF制御により速度制御されることが多い。三相かご形誘導電動機は標準モーターとして日本産業規格(JIS(ジス))などにより性能、形状が定められ、市販されている。なお、標準モーターのそれぞれの出力に対応する汎用(はんよう)インバーターも市販されている。単相誘導電動機は、ほとんどがこのかご形構造の回転子を使ったかご形誘導機である。かご形回転子は三相機とまったく同一である。
[森本雅之]