日本大百科全書(ニッポニカ) 「カスミサクラダイ」の意味・わかりやすい解説
カスミサクラダイ
かすみさくらだい / 霞桜鯛
Japanese perchlet
barred red bass
[学] Plectranthias japonicus
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハナダイ亜科に属する海水魚。相模(さがみ)湾から鹿児島湾の太平洋岸、沖縄諸島、東シナ海、台湾南部、フィリピン諸島、オーストラリア北西岸などに分布する。体は楕円(だえん)形で側扁(そくへん)する。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下に達する。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。上顎の前部に1対(つい)の短い犬歯があるが、下顎にはない。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)に逆V字形の絨毛状の歯帯がある。口蓋骨にも歯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の上縁と丸みのある角に鋸歯(きょし)があり、下縁に前向きの棘(きょく)がない。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨に鋸歯縁がある。体に大きな櫛鱗(しつりん)をもち、主上顎骨は鱗(うろこ)をかぶる。側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は30~35枚。側線の上方横列鱗数は2枚で、下方横列鱗数は10枚。背びれには深い欠刻(切れ込み)があり、第4または第5棘がもっとも長い。各棘に糸状の皮弁(皮質突起)がつかない。胸びれは長くて、臀(しり)びれの起部を越えて後方に伸びる。腹びれは肛門(こうもん)に達しない。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)か円形で、上葉は伸びない。体色は赤色で、背側に6~7個の橙赤(とうせき)色の斑紋(はんもん)があり、最初の斑紋は背びれ起部と目の中間に、最後のものは尾柄(びへい)の上にある。背びれの棘部は桃色で、先端部は緑黄色。尾びれの上半部は黄色で、下半部は淡赤色。胸びれ、臀びれおよび腹びれは淡赤色。水深30~100メートルの砂泥底にすみ、全長20センチメートルあまりになる。冬、底引網でかなり多量に漁獲され、かまぼこの材料にされる。
本種はかつて別種として、おもしろい学名のSayonara satsumae(さよなら薩摩(さつま)え。アメリカの魚類学者が日本の採集地から離れる際に命名)が使われていたが、本種とシノニムsynonym(同物異名)にされた。本種はイズハナダイ属に属するが、尾びれの後縁が截形かやや丸みを帯びること、背びれに深い欠刻があること、主上顎骨は鱗をかぶることなどで本属の多くの他種と区別できる。
[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]