改訂新版 世界大百科事典 「カノコガ」の意味・わかりやすい解説
カノコガ
Amata fortunei
鱗翅目カノコガ科の1種。幼虫はタンポポの葉を食べる黒色の毛虫で,成虫は開張3cm内外。翅が黒く,前翅に6個の透明紋があり,後翅の半分くらいが透明。体は青色光沢があり,二つの黄色帯がある。全国的に分布し,成虫は草地を低く飛ぶ昼飛性のガ。年2回発生し,幼虫で越冬する。日本には,この科は本種のほかキハダカノコとツマキカノコの2種を産する。
カノコガ科Ctenuchidaeは熱帯に属種が多く,温帯から寒帯にはごく限られた種しか分布していない。成虫はすべて昼間活動性で,同じ地域にすむハチやベニボタル科の一部と非常によく似ていて,擬態しているものと考えられている。このような例はとくに熱帯アメリカに多く,一部のカノコガ類ははでな色彩をしていて,同一地域のヒトリガ科とよく似ている。カノコガ類の一部は,食虫性の鳥や獣類のきらう体液をもっているものと推定されている。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報