日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
カラチャエボ・チェルケシア
からちゃえぼちぇるけしあ
Карачаево-Черкесия/Karachaevo-Cherkesiya
黒海とカスピ海の間の大カフカス山脈北側に位置し、ロシア連邦に属する共和国。正称カラチャエボ・チェルケシア共和国Карачаево-Черкесская Республика/Karachaevo-Cherkesskaya Respublika。カラチャエボ・チェルケス共和国ともいう。英語ではカラチャイ・チェルケシアKrachai-Cherkessiaが一般的。面積1万4100平方キロメートル、人口42万8700(2003推計)。首都はチェルケススク。
[上野俊彦]
沿革
1922年ロシア連邦社会主義共和国に属する自治州として創設された。1926年カラチャイ自治州とチェルケス民族管区(1928年チェルケス自治州となる)に分離。1943年カラチャイ自治州の廃止によって住民は強制移住させられたが、1957年再統一され、ソ連崩壊(1991年12月)までロシア連邦社会主義共和国に属するカラチャエボ・チェルケス自治州として存続した。ソ連崩壊に伴い政体を変更し、1992年ロシア連邦に属するカラチャエボ・チェルケシア共和国となった。
[上野俊彦]
国土
国土は大カフカス山脈の分水嶺(ぶんすいれい)を南限としてその北側斜面に位置し、南はジョージア(グルジア)との国境となっている。大カフカス山脈の最高峰エリブルース山(5642メートル)は、当国とカバルディノ・バルカリア共和国との境界にそびえる。水系はすべてクバン川とその支流に属する。平均気温は1月零下10~零下5℃、7月8~21℃。年降水量は550~2500ミリメートル。
[上野俊彦]
住民・言語
1989年国勢調査による民族構成は、ロシア人(17万5931、42.4%)、カラチャエフ人(12万9449、31.2%)、チェルケス人(4万0241、9.7%)、その他である。カラチャエフ人とチェルケス人は言語・文化を異にする。カラチャエフ人の言語は、東隣のカバルディノ・バルカリア共和国に居住するバルカル人と同言語のチュルク諸語(トルコ系諸言語)キプチャク語群に属するカラチャイ・バルカル語である。他方チェルケス人の言語は同じくカバルディノ・バルカリア共和国に居住するカバルダ(カバルディン)人と同言語のカバルディ・チェルケス語であるが、この言語はアブハジア共和国に居住するアブハズ人のアブハズ語、アディゲア共和国に居住するアディゲイ人のアディゲイ語とともにカフカス諸語アブハズ・アディゲイ諸言語に属する。宗教は、カラチャエフ人、チェルケス人ともにイスラム教スンニー派である。
[上野俊彦]
産業
おもな工業は、石油化学、化学、食品加工、軽工業、機械、金属加工、電気機器、木材加工で、石炭採掘その他の鉱業も行われる。農業は、乳・肉用家畜やヒツジなどの牧畜、小麦、トウモロコシ、キビ、大麦、ヒマワリ、サトウダイコン(テンサイ)、ジャガイモ、野菜、果樹の栽培。エリブルース山麓(さんろく)のテベルダなどは保養地、観光・登山基地として著名。
[上野俊彦]