政体(読み)せいたい(英語表記)forms of government

精選版 日本国語大辞典 「政体」の意味・読み・例文・類語

せい‐たい【政体】

〘名〙
政治組織形態。政治の体系君主制共和制民主制など。
※童子問(1707)下「凡関国家之治乱成敗風俗政体、足百代之鑑戒者」
※新聞雑誌‐一九号・明治四年(1871)一一月「内乱鎮静の後彌共和政治の政体を取立」 〔晉書‐劉頌伝賛〕
② 国家を、統治権が運用される状態によって区分した形態立憲政体と専制政体がある。また、国体と同義に用いられることもある。
※国会開設の勅諭‐明治一四年(1881)一〇月一二日「又夙に立憲の政体を建て、後世子孫継くへきの業を為さんことを期す」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「政体」の意味・読み・例文・類語

せい‐たい【政体】

国家の政治形態・統治形態。君主制貴族制・民主制・共和制など。
統治権の運用形式によって区別される政治形態。立憲政体と専制政体とに分けられる。→国体

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「政体」の意味・わかりやすい解説

政体
せいたい
forms of government

一般には各国の政治形態、統治形態をさす。アリストテレスは、政体の種類を、君主制、貴族制、民主制の三つの形態に区分し、また上記3種の政体が堕落した政体をそれぞれに専制、寡頭制、衆愚制と名づけた。この区分法は、その後、政治形態の典型として今日まで用いられてきたが、20世紀に入って新たにファシズム諸国家、社会主義諸国家の政治形態や第三世界におけるさまざまな政治形態が現れるに及んで、アリストテレスの古典的区分法も、現代の政体を説明するのにはかならずしも十分なものとはいえなくなった。

 ところで、戦前日本では、この「政体」という語は、「国体」という語との関連で、政治上、特別な意味に用いられていた。すなわち、ここでは「国体」と「政体」とが厳密に区別され、日本の国体は万世一系の天皇が統治する万邦無比の政治共同体であり、天皇の地位は神聖・不可侵であるから国体は変更できない、これに対し、政体は国の政治のあり方が、立憲的か専制的かあるいは共和制的かによって異なり、したがって政体は自由に変更できる、というわけである。美濃部達吉(みのべたつきち)は、国体という概念は歴史的・倫理的概念ではあっても法学的概念ではないとして、国体と政体の区別を批判し、それによって、政党政治に基づく議院内閣制の確立を主張したが、官僚政治を基本とする当時の日本では少数意見にとどまった。そればかりか、政府は、国体と政体を区別する方法は国体の変革を目ざす危険な社会主義思想につながるものであり、また結局のところ、政治一般を批判することはとりもなおさず天皇政治を批判するものであるとして、自由主義者や民主主義者までをも厳しく取り締まることとなり、明治憲法下においては民主政治はほとんど発展しないという結果を招いた。

[田中 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「政体」の意味・わかりやすい解説

政体【せいたい】

国家の政治形態。国体と違って,おもに権力の運用方法から分類される。アリストテレスによる君主制貴族制民主制の三区分法は長く用いられた。日本ではかつて,上記の区分法は国体の区分法であって政体はこれとは別に,君主制下での政治のあり方により立憲制(立憲君主制)と専制(専制政治)に区分されるとする説もあった(穂積八束上杉慎吉ら)。→政体循環論

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「政体」の読み・字形・画数・意味

【政体】せいたい

政治の方法。〔晋書、劉頌伝〕(上そ臣の言ふは、體の常なり。然れども古今宜を異にし、同じからず。

字通「政」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典 第2版 「政体」の意味・わかりやすい解説

せいたい【政体 form of government】

政治共同体の支配ないし統治の形態を指す語。西洋において,政治社会に関する自覚的な考察が行われるようになって以来,いかなる形態の政治社会が最も優れているかという価値判断を含んださまざまな政体論が展開され,現実にも大きな影響を及ぼしてきた。古代ギリシアにおけるポリスの自由の観念自体,オリエントの専制政治との対比によって意識されたといえよう。プラトンは《国家》において哲学者の支配する優秀者支配制を理想的政体とし,現実の諸政体をそれからの逸脱形態として描く。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「政体」の意味・わかりやすい解説

政体
せいたい

通常は国家政治形態の区分,たとえば君主制,貴族制,民主制,共和制など一国の政治が行われる形態をさす。しかし特に日本では国法学において,いわゆる国体概念に対比する概念としても用いられ,論争されてきた。穂積八束によれば,国体が主権の所在によって規定されるのに対し,政体は主権行使の様式によって規定されるという。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

激甚災害

地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。激甚災害法(1962年成立)に基づいて政令で指定される。全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準に...

激甚災害の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android