カバルディノ・バルカリア(読み)かばるでぃのばるかりあ(その他表記)Кабардино-Балкария/Kabardino-Balkariya

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カバルディノ・バルカリア
かばるでぃのばるかりあ
Кабардино-Балкария/Kabardino-Balkariya

ロシア連邦に属する共和国。ロシア南西部の大カフカス山脈北麓(ほくろく)に位置する。正称カバルディノ・バルカリア共和国Кабардино-Балкарская Республика/Kabardino-Balkarskaya Respublika。カバルダ・バルカル共和国ともいう。面積1万2500平方キロメートル、人口78万6000(1999)。首都はナリチク。人口23万4700(1999)。

[上野俊彦]

沿革

テレク川南方を占めるカバルダ地方は、クリム・ハン国およびトルコ侵攻に対抗するため1557年自発的にロシア領となり、1774年最終的にロシアに併合された。北方のバルカリア地方は1827年にロシア領となった。1921年ロシア連邦社会主義共和国に属するカバルダ自治州が設立され、1922年カバルディノ・バルカリア自治州となる。1936年自治州は自治共和国に格上げされたが、1944年ドイツに協力したとしてバルカル人の自治は廃止され、住民は強制移住させられ、名称もカバルディノ自治ソビエト社会主義共和国と改められた。1957年カバルディノ・バルカリア自治ソビエト社会主義共和国として復活し、ソ連崩壊(1991年12月)を迎えるが、直前の1991年1月共和国最高会議は国家主権宣言を採択し、1992年2月ロシア連邦のカバルディノ・バルカリア共和国となった。

[上野俊彦]

国土

国土は大カフカス山脈中央部の長さ約100キロメートルの分水嶺(ぶんすいれい)を南限としてその北東側斜面に位置し、カスピ海に注ぐテレク川の多くの支流の最上流部に広がる。南はジョージアグルジア)との国境となっている。大カフカス山脈の最高峰エリブルース山(5642メートル)は、当国とカラチャエボ・チェルケシア共和国との境界にそびえる。平均気温は1月零下12~4℃(山地)、7月4~23℃。年降水量は500~2000ミリメートル。

[上野俊彦]

住民・言語

1989年国勢調査による民族構成は、カバルダ(カバルディン)人(36万3494、48.2%)、ロシア人(24万0750、32.0%)、バルカル人(7万0793、9.4%)、その他である。カバルダ人とバルカル人は言語・文化を異にする。カバルダ人の言語は、西隣のカラチャエボ・チェルケシア共和国に居住するチェルケス人と同言語のカバルディノ・チェルケス語(カバルディ語)であり、この言語はアブハジア共和国に居住するアブハズ人のアブハズ語、アディゲア共和国に居住するアディゲイ人のアディゲイ語とともにカフカス諸語アブハズ・アディゲイ諸言語に属する。他方、バルカル人の言語は、同じくカラチャエボ・チェルケシア共和国に居住するカラチャエフ人と同言語の、チュルク諸語(トルコ系諸言語)キプチャク語群に属するカラチャエボ・バルカル語である。宗教は、カバルダ人、バルカル人ともにイスラム教スンニー派である。

[上野俊彦]

産業

おもな鉱工業は、タングステン・モリブデン鉱の採掘精錬、採掘機械製作、電気機器、木材加工機械、自動車部品など。農業は、小麦、トウモロコシ、ヒマワリ、野菜、果樹、ブドウの栽培、乳・肉用家畜およびヒツジの牧畜、馬匹種畜など。観光客、登山客も多い。

[上野俊彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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