カワビシャ(読み)かわびしゃ(その他表記)sailfin armourhead

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワビシャ」の意味・わかりやすい解説

カワビシャ
かわびしゃ / 川飛車
sailfin armourhead
sailfin boarhead
[学] Histiopterus typus

硬骨魚綱スズキ目カワビシャ科に属する海水魚。太平洋岸では青森県陸奥(むつ)湾、千葉県房総(ぼうそう)半島から九州南岸、日本海岸では新潟県から九州北西岸、東シナ海、朝鮮半島、台湾、広東(カントン)省などの中国大陸、フィリピン諸島、オーストラリア北岸、南アフリカなど西太平洋とインド洋に広く分布する。体は三角形状で、体高は著しく高く、強く側扁(そくへん)する。頭部背面、鰓蓋(さいがい)部、眼前骨、肩帯部などに骨板が露出する。体の前部外郭は吻部(ふんぶ)で前に突出し、目の前方でいくぶん膨らみ、背びれ起部まで急角度に上昇する。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁のはるか前方にある。下顎前端に小さいひげが絨毛(じゅうもう)状に密生する。上下両顎に幅広い歯帯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)と口蓋骨に歯がない。鱗(うろこ)は小さい櫛鱗(しつりん)で、頭部はほとんど無鱗。側線胸びれ上方で大きく湾曲する。側線有孔鱗数は60~66枚。背びれは4棘(きょく)27~28軟条、第1棘と第2棘はきわめて短く、第3棘と第4棘と軟条は著しく長く伸び、帆状。臀(しり)びれは3棘10軟条で、第2棘は強大。体色は淡黄色で、約4本の黒褐色の横帯がある。腹びれは黒く、背びれ、臀びれ、尾びれは暗色。稚魚は全身と胸びれと尾びれを除くすべてのひれが大きな暗褐色斑(はん)で覆われる。水深100~300メートルの岩礁やその付近の砂底にすむ。全長35センチメートルに達する。底引網でまれに混獲される。煮つけなどにするとわりあいおいしい。本種に体形や色斑がきわめてよく似たテングダイEvistias acutirostrisは背びれ第3棘と第4棘が短くて、背びれの前縁長のおよそ半分しかなく、吻部はより著しく筒状に突出し、そして体側に5本の鮮明な黒褐色の横帯があることで識別できる。

[片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワビシャ」の意味・わかりやすい解説

カワビシャ
Histiopterus typus

スズキ目カワビシャ科。全長 40cmになる。体は三角形で体高は高く,著しく側扁する。体側には4条の暗褐色の横帯がある。上顎の前端と頤に短いひげが密生する。頭部は露出した骨におおわれる。腹鰭のとげは強大。銚子以南の南日本,フィリピン,南シナ海などに分布する。食用。やや美味。

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