翻訳|handbag
財布や化粧品その他の小物類を入れて持ち歩く、小型の鞄(かばん)または手提げ袋。手に提げたり抱えたり、腕や肩にかけたり、首や腰につるしたりして持つ袋物をさす。実用的要素の強いアクセサリーで、衣服形態と密接な関連をもち、形、サイズ、素材、デザインは時流に応じて多様に流行が変わる。日本では、クラッチバッグ(片手で抱え持つバッグ)、ボストンバッグ、ショルダーバッグ、ポシェット(首や肩からつるす小さなポケット状のバッグ)、パース(小型バッグ)、ベルトポケット(ベルトに通してウエストにつける)などがある。
袋物の使用は古く、紀元前9世紀ごろのアッシリアには、四角い手提げ袋(一説では手桶(ておけ))を手にした神像の浮彫りがみられる。前7世紀のバビロニアでは、宗教儀式に必要なバッグがあった。古代ギリシアでは、ポケットの代用に袋をベルトにつるすことが行われ、この風習は中世後期まで続く。この袋は、中世にはオモニエール、エスカルセルとよばれ、財布や鍵(かぎ)や施し物、ナイフ、櫛(くし)などを入れていた。今日流行のポシェットのルーツともいわれる。また16世紀初期には、婦人たちに香水を入れて持ち歩くことが流行した。このころからスカートの大型化が進み、膨らませたスカートの内部に、バッグの代用を果たすポケットを隠し付けにする方法が行われた。
現代の手提げ式のハンドバッグは、19世紀のスリムなエンパイアスタイルから生まれたレティキュールが原型といえる。エンパイアスタイルは、ウエストラインが高く、スカートも細かったので、前記のような「スカート内部のポケット」は不可能であったので、ふたたびバッグへの関心が高まった。堅牢(けんろう)なデザインの機能的なバッグが完成したのは19世紀の末期。20世紀に入ると、女性の職場進出に伴ってバッグの需要が増し、いわゆるハンドバッグの大流行が始まった。第二次世界大戦後は肩にかけるショルダーバッグが支配的傾向をもつようになる。1975年、パリ・コレクションにポシェットが登場、同じころから小型のボストンバッグがタウン用にも台頭してきた。カジュアルなものは男女両用のバッグがあり、近年は男子のショルダーバッグが伸びている。ツーウェイバッグ、親子バッグ、折り畳みバッグなど、くふうを凝らしたものも多い。
[平野裕子]
財布や化粧品などの小物を入れて,手に提げたり,肩にかけたりして携行するものの総称。一般には婦人用を指す。前9世紀アッシリアの浮彫にハンドバッグに似た四角い手提げ袋を提げた僧侶の姿が見られる。中世には,貴族の女性たちが,ベルトにオーモニエールaumônièreという袋を吊るし小銭や鍵などを入れていた。これが,西洋におけるハンドバッグの前身といわれている。ルネサンス期には小物入れとしてポケットが利用されるが,19世紀になると,スカートがタイトになったため手に提げる袋が必要になり,インディスペンサブルindispensableと呼ばれるものが生まれた。ハンドバッグということばは19世紀中ごろから使われはじめた。日本では,袋物の歴史は古いが,懐中に入れるものから手に提げて持つものになったのは,明治中期の信玄袋が最初であった。1905年には布製の手提げ袋がオペラバッグの名で発売され,日本におけるハンドバッグの原型となった。ハンドバッグということばが一般的になったのは,大正末ころからである。第2次世界大戦直後は光沢のあるナイロン製ハンドバッグに人気が集中し,革製の1.5倍の価格がついたこともあった。最近では,男性用にもハンドバッグ的要素をもったバッグが出ている。
執筆者:青羽 真理子
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