貨車操車場のハンプヤードで仕分け中の貨車の速度を自動的に制御させる装置。ハンプヤードとは小高い丘(ハンプ)が築かれた操車場をいう。
ハンプヤードにおいて貨車を目的地別に仕分けする場合、ハンプ頂上で切り離された貨車は下り勾配(こうばい)を走りながら、行先別に定められたそれぞれの方向別線に仕分けされる。転送貨車を仕分け線の適切な位置に止めるため、従来は入換え作業を行う係員が貨車の側面に乗って制動桿(かん)を足で踏むことによりブレーキをかけていたが、多くの係員を要し、かつ作業内容に傷害事故防止上危険なものがあった。カーリターダーは、レールの左右に制動桁(けた)を取り付け、貨車の車輪を左右から挟み込み締め付けることによって制動を行う。操作動力の方式により空圧式カーリターダーのほか、電磁式カーリターダー、油圧ユニット式カーリターダーなどに分けられる。
[大澤伸男]
貨車にブレーキをかけるために,線路に設置される装置。鉄道による貨物輸送では,集められた貨車群から方面別に列車を編成するため,目的地別に貨車を分類する必要がある。多くの貨車操車場,貨物駅などではハンプと称される小高い山を設け,その頂上から貨車を数両ずつ重力によって転走させ,途中の分岐器操作によって目的地別に別個の線(仕訳線)へ振り分ける作業が行われる。この作業の際,貨車にブレーキをかける方法として,最初は人間が車両側面に乗り込み,車両ブレーキを扱って速度を落とす方法がとられていたが,現在ではカーリターダーによって車両速度を調整する方法が採用されている。初期のカーリターダーでは線路外から人間がボタンなどで操作する方式であったが,現在では車両の速度,重量および風速などを勘案したコンピューターによる自動制御が主流となっている。形式としては鉄製ブレーキシューを空気圧などにより車輪側面に押しつけるものが多いが,ブレーキのみでなく低速車両の加速が可能なものも開発されている。
執筆者:田中 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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