操車場(読み)そうしゃじょう

精選版 日本国語大辞典 「操車場」の意味・読み・例文・類語

そうしゃ‐じょう サウシャヂャウ【操車場】

〘名〙 客車または貨車を操車して、列車の分解および組成を行なうための停車場。客車の留置、検修および旅客列車の組成が主の客車操車場と、貨物列車の分解、仕分、組成が主の貨車操車場とがある。
※霧の中(1947)〈田宮虎彦〉「操車場から汽笛がひっきりなしにきこえて来た」

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デジタル大辞泉 「操車場」の意味・読み・例文・類語

そうしゃ‐じょう〔サウシヤヂヤウ〕【操車場】

列車の編成や車両の入れ換え・整備などを行う場所。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「操車場」の意味・わかりやすい解説

操車場
そうしゃじょう

停車場の一種で、列車の組成、または車両の入れ換えを行うために設けられた場所。ヤードyardともいう。客車操車場、貨車操車場の2種類がある。

 客車操車場は、運転を終えて到着した旅客列車の客車を清掃、洗浄、検修、組替え、留置し、また出発する列車の仕立てを行う場所である。しかし、電車やディーゼル車が増え、蒸気機関車のかわりに電気機関車、ディーゼル機関車が使われるようになると、客車だけでなくこれらの車両を検査、修理、清掃、整備する総合的な車両基地終着・始発駅の近くに設けられるようになった。したがって、その後は、操車場の名称はおもに貨車操車場について使われていた。さらに貨物操車場についても、かなりの規模の用地を必要とするため、土地価格の高騰による用地コストの問題から廃止の方向で整備が続けられてきた。そして国鉄では、1986年(昭和61)11月に実施したダイヤ改正で貨車繰車場を全廃した。87年4月に国鉄は分割・民営化され、国鉄の貨物部門は日本貨物鉄道(JR貨物)に引き継がれた。JR貨物では、競争の激しい物流市場のなかで鉄道貨物の特性を発揮できる「大量定型輸送」を中心とし、コンテナによる直行輸送、物資別専用輸送を担当している。ここでは、かつての貨物操作場について解説する。

 貨車操車場は、到着した貨物列車の全部または一部を分解のうえ仕分けし、行先別・駅順に整理し、組成替えして貨物列車を仕立てる作業を行う場所で、物資の流動の集中する大都市、産業都市の周辺、主要幹線の分岐点、水陸連絡の中継点などに設置する。

 貨車操車場の役目は、集まってくる貨車を定められた仕分け区分に従って仕分けし、グループ化すること、グループ化した貨車を列車ごとに定められた組成方法に従って組成し、列車を仕立てることのほか、貨物駅に、積込み貨物に適合した形式の空車を操配すること、一時不要となった空車や貨物駅で積卸し作業の余裕のない到着車を仮留置しておくこと、列車牽引(けんいん)定数を調整することなどである。なお、操車場で始終着となる貨物列車が多いので、機関車の付け替えや乗務員の交替、貨車の検修作業が行われる。そのため、大規模な操車場には、機関車基地、貨車検修基地、乗務員基地が併設される。

 貨車操車場は、貨車の仕分けの方法により、平面で入換え機関車による突き放し作業によって仕分けを行う平面操車場と、ハンプからの自然転走によって仕分けを行うハンプ操車場ハンプヤード)とに大別される。1日取扱い能力は、平面操車場の場合、最大2000~2500両、ハンプ操車場(ハンプ一山)の場合、押上線一線で2000~3000両、押上線二線で3000~4000両である。平面操車場の場合は、仕分けしようとする貨車列の連結器を切り、機関車で推進運転により引上線に据え付ける。そして、加速したのち制動を行うことにより、貨車を目的の仕分け線へ突き放す作業を、貨車の分解回数だけ繰り返す。この方式では、分解に長時間を要するが、建設費が安いので、小規模な操車場には平面操車場が多い。ハンプ操車場の場合は、押上線と仕分け線との間にハンプという小山(高さ2~5メートル)を設け、押上線に据え付けた貨車列を入換え機関車によってハンプに押し上げ、貨車の連結器をハンプの頂上で切って、貨車を仕分け線へ自然転走させる。ハンプの勾配(こうばい)は、最急部分で40~70‰(パーミル、千分率)とし、順次緩やかなものに変化させる。この方式では、仕分け作業の所要時分が短く能率的なので、大規模な操車場にはハンプ式が多い。ハンプから転走してくる貨車を仕分け線内で停車させる方法には、構内作業員がハンプから貨車に添乗しサイドブレーキを扱って停車させる方法、カーリターダーによって遠隔操作で貨車を減速させ、低い速度で進入してくる貨車に構内作業員が飛び乗ってサイドブレーキにより停車させる方法、およびヘムシューによって減速停車させる方法がある。

 貨車操車場における作業の多くが人手に頼っていて生産性が低いうえ、危険度の高い作業も多いので、構内作業要員の縮減と作業能率、安全度の向上のため作業の自動化が開発されてきた。それは、貨車速度制御の自動化と情報処理の近代化とに大別される。前者には、ターゲットシューティング方式、ダウティ(油圧加減速)方式、リニアモーター方式などがあり、制動要員が不要となる。後者は、コンピュータを利用して、作業計画の作成、構内の進路制御、統計類の作成などを行うものである。

[土田 廣]

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改訂新版 世界大百科事典 「操車場」の意味・わかりやすい解説

操車場 (そうしゃじょう)
marshalling yard

鉄道の停車場の一種で,旅客や貨物の取扱いはせず,もっぱら機関車や客車,貨車を集めて一つの列車に仕立てたり,車両の入換えを行うために設けられた場所。客車の取扱いを主とする客車操車場と貨車の取扱いを主とする貨車操車場に大別されるが,車両基地も操車場の一種といえる。

 客車操車場は到着旅客列車を受け取り,車両の検査,修繕,洗浄などを行うとともに,次に用いられるまでの客車の収容,留置,車両の編成替えなどを行う施設であり,到着線,組替線,洗浄線,消毒線,仕立検査線,修繕線,留置線,予備車線,出発線などの多数の線群で構成されている。編成を終えた客車列車は回送列車として始発駅へ送り出されるが,最近では電車や気動車などを列車ごとに固定編成として運用することが多く,入換作業は減少している。

 車両基地は各種車両の検査,修繕,留置などを行う施設の総称であり,また列車を運転する乗務員の拠点にもなっている。車両は大別すると,機関車,気動車,電車,客車および貨車になるが,それぞれ扱う車種に応じて,機関区,気動車区,電車区,客貨車区などと呼ばれている。

 貨物列車は,行先の違うたくさんの貨車から組成されている。このため,個々の駅で貨物を積み込んだ貨車を一度集めて,行先方向別,到着地域別,駅順などに整理して列車を編成することが必要となる。この作業を行うところが貨車操車場で,小は駅に付随した側線2~3本のものから,大は一時に6000両の貨車を取り扱うことができるものまでさまざまなものがある。一般に貨車が多数集散する付近や幹線の接合点などに設けられる。

 貨車操車場は操車の方法によって平面操車場,ハンプ操車場,重力操車場の3種類に分けられる。平面操車場は水平に設置された仕分線を利用し,機関車で貨車の入換え,編成を行う方式のもの,ハンプ操車場は人工的に作った小丘(ハンプ)の上に機関車で貨車を押し上げ,重力を利用して貨車をそれぞれの仕分線に自走させる方式のもので,貨車の数が多く行先が多方面にわたる場合に有効である。重力操車場は一方に傾斜している斜面を利用して操車場を設置し,重力を利用して貨車を自走させる方式で,建設費は安いが,そのまま利用できる地形はまれ。

 貨車操車場ではその作業効率を向上させるため,カーリターダーの導入やコンピューターによるポイント切換えなどの自動化が積極的に進められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「操車場」の意味・わかりやすい解説

操車場
そうしゃじょう
marshalling yard; yard

列車の編成と入替えを行うために必要な線群と設備を備えた鉄道施設で,客車操車場と貨車操車場がある。客車操車場は始発列車を仕立て,留置するほか,検査・洗浄なども行うので,始終端駅に隣接して設けられるものが多い。貨車操車場は各方面から到着した貨物列車を分解し,貨車を入替えて各方面へ行く列車を仕立てるのがおもな作業である。このため貨車操車場には引上げ線を利用して貨車を分解し,仕分けを行う平面操車場と,重力によって貨車を仕分け線に自走させるハンプ操車場がある。ハンプ操車場ではポイントの転換や貨車入替えのブレーキの自動化が進み,近年は仕分け作業の安全性,能率が著しく向上している。

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百科事典マイペディア 「操車場」の意味・わかりやすい解説

操車場【そうしゃじょう】

列車の組成を行う場所。停車場の一種。扱う列車の客貨の別により客車操車場と貨車操車場に分ける。後者には小丘(ハンプ)の下り勾配(こうばい)を利用して貨車を転走させ仕分けるハンプ操車場,入換機関車で仕分ける平面操車場がある。日本では貨車操車場は廃止され,客車操車場は車両基地化されている。
→関連項目ハンプ(鉄道)

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世界大百科事典(旧版)内の操車場の言及

【停車場】より

…停車場には,運転上必要なさまざまな業務機関として機関区,電車区,保線区,電気区などが配置される場合が多く,鉄道の輸送業務の基地とも称すべきものである。停車場をその業務内容によって,列車を停止させ旅客または貨物の取扱いを行う,もっぱら列車の組成または車両の入換えをする操車場,列車の行違い,待合せをするための施設で,旅客,貨物は扱わない信号場の3種に分類することもあるが,一般には駅のことを停車場という場合が多い。【古橋 正雄】。…

※「操車場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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