レール(読み)れーる(英語表記)rail

翻訳|rail

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レール」の意味・わかりやすい解説

レール
れーる
rail

鉄道車両の荷重を直接支持して枕木(まくらぎ)に分散させるとともに、平滑な走行面を与え車両を誘導する特殊断面形状をした帯状の鋼製品。

[福山富士夫]

種類

断面形状と質量によって区分される。世界各国で、それぞれ違った断面形状が使用されている。日本では日本工業規格(JIS(ジス))‐E1011(普通レール)と、JRの規格(JRS)で規格化され、1メートル当り計算質量で区別している。

[福山富士夫]

質量による区分

現在のJIS規格の種類は、30キログラム、37キログラム、50キログラム、60キログラム、40キログラムN、50キログラムNの6種類である。標準長は25メートルで、継目板によって接続して使用する。しかし、車両の乗り心地、騒音、軌道保守、レール損傷など多くの面から、継ぎ目部は線路の最大の弱点となっている。JRでは25メートルレールを溶接した200メートル以上のレールを主要線区に使用してロングレールとよんでいる。

[福山富士夫]

断面形状

頭部腹部底部から構成されている。つねに車輪が接触する頭部は、接触による摩耗を最小に抑え、また摩耗による断面の減少に対しての余裕のある断面形状とし、車両の円滑な走行を図っている。腹部は車両の荷重を頭部から底部に伝達する部分で、十分な剛性をもちながら材料の使用量を最低にする考慮がなされる。底部の形状は、枕木上に安定して定着し、車両重量による横転への抵抗力があり、しかも、全体の断面の均衡、製造上の圧延条件、長期に使用した場合の腐食による断面減少などを考慮して決定する。

[福山富士夫]

品質

鋼は鉄と炭素合金で、用途によって配分量が異なる。レール鋼は炭素が多い高炭素鋼で、鉄、炭素、ケイ素、マンガン硫黄(いおう)、リンによって構成されている。炭素は鉄と化合してセメンタイトとよばれる炭化鉄の硬い結晶になり、鉄だけの軟らかいフェライトの結晶の中に層状に分布する。炭素が多いほど硬く、少ないほど軟らかい鋼となるわけである。ケイ素は、溶鋼が固まる際に気泡となって残留する酸素を除去する脱酸剤として作用する。マンガンは、脱酸剤とともに、靭性(じんせい)(ねばり強さ)を低下させる硫黄を除去する脱硫剤としての役目をする。硫黄とリンは製鉄原料中に含有されているが、鋼を劣化させる有害元素なので、できるだけ少なくすることが必要である。

 レールの強さ、すなわち機械的性質は、引張り強さと伸びとで表される。引張り強さが大きいほど耐久力があるとされているが、伸びは小さくなる。

[福山富士夫]

日本でのレールの使用

1872年(明治5)新橋―横浜間の開業当初は、頭部と底部が同じ断面の双頭レールが使用されていた。その後、1906年(明治39)には30キログラムと37キログラムレールが、28年(昭和3)には50キログラムレールが採用された。第二次世界大戦後、61年(昭和36)に、40キログラムNと50キログラムNレールが国鉄で使用され始めた。64年開業の東海道新幹線には50キログラムTレールが、67年の山陽新幹線には60キログラムレールが使われた。旧国鉄区間では、1965年から上級線区には60キログラムレール、下級線区には50キログラムNレールを使用することが決められた。

 急曲線区間での外軌側レールは、直線区間に比べて摩耗速度が速いので、レール頭部に焼入れ・焼戻しの熱処理をした頭部熱処理レールが使用されている。また25メートルの標準長レール区間では、継ぎ目部分の衝撃に耐えるために、レールの端の頭部に熱処理を施した端頭部熱処理レールが使われている。

[福山富士夫]

『加藤八州夫著『レール』(1978・日本鉄道施設協会)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例