ガウダパーダ(読み)がうだぱーだ(その他表記)Gauapāda

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガウダパーダ」の意味・わかりやすい解説

ガウダパーダ
がうだぱーだ
Gauapāda
(640―690ころ)

インドベーダーンタ学派に属する哲学者弟子ゴービンダGovindaがおり、さらにその弟子に、同学派中もっとも有力な不二一元論(ふにいちげんろん)派の開祖シャンカラがいる。ガウダパーダの編纂(へんさん)した『マーンドゥーキヤ頌(じゅ)』は、現存する独立の著作のなかで初めて不二一元論(唯一不二の実在ブラフマン・アートマンのみが真実であり、現象世界は実在しない虚妄であるという説)が説かれている点で重要である。本書は、後ろの章ほど大乗仏教の影響が顕著であり、最後の第4章は唯識(ゆいしき)学派の説に酷似している。なお、『サーンキヤ頌』の注釈が彼に帰せられているが、両者の同異については定説がない。

[島 岩 2018年5月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ガウダパーダ」の意味・わかりやすい解説

ガウダパーダ
Gaudapāda

インドのベーダーンタ学派の学匠。640-690年ころの人。弟子がゴービンダ,そのまた弟子がシャンカラと伝えられている。彼に帰せられる《マーンドゥーキヤ・カーリカーMāṇḍūkya-Kārikā》(別名《ガウダパーディーヤ・カーリカー》)には,覚醒時に経験する現象界は,夢で経験する世界と同じく虚妄であり,真実は不二advaitaであり,個我とアートマンは不異であると,不二一元論が初めて明らかに述べられている。後の章になるほど仏教的色彩が濃く,特に最終章では,世界は識vijñānaの顕現したものであると,仏教瑜伽行派の〈唯識無境〉〈識の転変〉説に酷似した説が見られる。《サーンキヤ・カーリカー》の注釈書《ガウダパーダ・バーシヤ》の著者は,同名異人と考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガウダパーダ」の意味・わかりやすい解説

ガウダパーダ
Gauḍapāda

7世紀中頃のインドのバラモン教の学者。人物伝記については詳細不明。『マーンドゥーキヤ・カーリカー』の編集修成者。また『サーンキヤ・カーリカー』に対する同名人の注釈書が伝えられているが,同一人であるかどうかについては学界結論が出ていない。

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世界大百科事典(旧版)内のガウダパーダの言及

【マーヤー】より

…仏教においては心作用の一つとされ,〈欺瞞〉〈裏切り〉を意味し,また〈人を眩惑する力〉〈幻〉を意味し,事物に実体がないことにたとえられる。仏教の影響を強く受けたベーダーンタ学派のガウダパーダの場合には,アートマン,心,あるいは思考のもつ〈神秘的な力〉〈魔術的幻影〉を意味する。不二一元論学派の開祖シャンカラの場合には,〈詐欺〉〈神の神秘的な,人を眩(くら)ます幻力〉〈魔術〉などを意味するにすぎないが,後継者たちの場合にはしばしば無明の同義語で,宇宙の質料因と考えられている。…

※「ガウダパーダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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