日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリラヤ」の意味・わかりやすい解説
ガリラヤ
がりらや
Galilee
古代のパレスチナの北部、すなわちヘルモン山麓(さんろく)から南のエスドラエロン平原に続く地方をさす。この平原はギルボア山とタボル山をおもな水源とするキション川に潤される肥沃(ひよく)な耕地で、古戦場として有名である。東境はヨルダン川とガリラヤ湖(ティベリアス湖)。ガリラヤの名は、ヘブライ語のガーリールgālîlのギリシア音訳ガリライアGalilaia(「周囲」すなわち「地方」の意)に由来する。元来はガリラヤ湖西方の山岳地帯の名称であった。旧約時代には先住民カナーン人が残存し、この地方は「異民族のガリラヤ」(「イザヤ書」)とよばれた。のち南方のエスドラエロン平原も含むようになった。イエスとその12人の弟子のほとんどはこの地方の出身であった。イエス時代には国守ヘロデ・アンティパス(在位前4~後39)の所領であり、イエスは生涯の大部分をここで過ごし、伝道の主要舞台であった。紀元後70年エルサレム陥落後ティベリアの町はパレスチナにおけるユダヤ教の重要な中心地となった。現在はイスラエルの行政区の一つで、その中心はナザレである。
[高橋正男]